調査検証委員会からの調査報告書の受領、および再発防止に向けた取り組み

本日、株式会社電通グループの取締役会は、調査検証委員会(委員長:池上 政幸氏(元最高裁判所判事))から「東京2020 オリンピック・パラリンピック関連事案に関する調査検証報告書」を、特別委員会を通して受領しましたので、これまでの経緯、報告内容および提言の要旨、および再発防止に向けた取り組みについてお知らせいたします。

1.経緯

2023年2月28日、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会におけるテストイベントの入札等事業に関して、国内子会社の従業員1名が独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会から刑事告発され、東京地方検察庁により起訴されました。また、同法の両罰規定により、2018 年当時に株式会社電通であった現在の株式会社電通グループが法人として起訴されました。

本件に関して、当社取締役会は2023年2月14日付で独立社外取締役3名を委員とする「特別委員会」を設置しました。また2月28日付で、特別委員会の下に、外部有識者3名で構成される調査検証委員会(正式名称:東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会関連事案に関する外部有識者による調査検証委員会)が設置され、同委員会にて、事案に係る調査を行い、原因の究明と今後に向けた提言の検討が進められてきました。また、これと並行して、当社内でも、再発防止に向けた方針を策定し、様々な取り組みを推進してきました。

そして、本日6月9日に、当社取締役会は、特別委員会を通して調査検証委員会による調査報告書を受領しましたので報告します。併せて、dentsu Japan改革委員会の設置を含む、再発防止に関するこれまで、および現在の方針や取り組みについてもご報告します。今後、本日受領した調査報告書に沿って、具体策の追加を行うことで、再発防止の実効性を一層高めていきます。また、全ての取り組みは、執行機能を担うグループ・マネジメント・メンバーが中心となり、主に日本地域において推進されます。

2.調査検証委員会による「調査報告書」の報告内容および提言要旨

≪報告内容≫
本事案の問題点は下記の3つ

(1) 過剰なまでに“クライアント・ファースト”を偏重する組織風土

  • dentsuはこれまで、クライアントの懐に飛び込み、クライアントが気付いてすらいない真意をも汲み取って、その期待を上回る成果を上げ続け、クライアントとの強い信頼関係を構築することを通じて、広告業界における現在の地位を築き上げてきた。このような仕事に対する積極的な姿勢は、dentsuの競争力の源泉となってきた一方で、ともすると、結果が全てを正当化するような思考に陥りがちであり、仕事に携わる者の視野を狭め、あるいは近視眼的になってしまうリスクを内包している。問題の根底には、このようなリスクへの配慮が疎かになる、いわば過剰なまでに“クライアント・ファースト”を偏重ともいうべき組織の姿勢ないし企業風土があったのではないかと考えられる。

(2) コンプライアンスリスクに対する感度の鈍さ

  • 上記(1)の問題と表裏一体の問題として、本事案に関与した者はもちろん、経営陣も含め、コンプライアンスリスクに対する感度が鈍かったことが指摘できる。こうした感度の鈍さは、本事案と同時期又は近接した時期において生じていた他社の問題を自社にも妥当し得る問題として捉えられなかったことに加え、自社で起こっている問題さえ、他人事のように捉え自分事として捉えることができていなかった点にも表れている。

(3) 手続の公正性・透明性への配慮を著しく欠いていたこと

  • 上記(1)の問題と表裏一体の問題として、手続の公正性・透明性への配慮を著しく欠いていたことが指摘できる。このことは、①組織委員会への出向に伴う利益相反の観点からのリスクを適切に管理するための措置(情報交換制限措置等)を実施していなかったこと、②組織委員会が時期の経過とともに公共機関としての性格を強めても、それに伴うリスクの変化について再検討がなされなかったこと、③テストイベント計画立案業務の委託先の選定が総合評価方式の競争入札によって行われることが決定された後も、委託先の選定方法が変わったことに伴うリスクの変化について再検討がなされなかったことにも表れている。

≪提言要旨≫

① 経営陣の強いコミットメントに基づく意識改革

  • 企業理念・行動指針のアップデート
  • “クライアント・ファースト”や“成功”といった概念の再定義
  • 経営陣の継続的なコミットメント:発信と行動の整合性確保
  • 経営監督機能の実効性の確保
  • 再発防止策等の実効性・透明性の確保(モニタリング及びステークホルダー・外部有識者との対話の場等)

② リスク管理システムの強化

  • 持株会社化を踏まえたリスク管理システムの検証・強化
  • プロジェクトベースのリスク管理制度の導入
  • モニタリング機能の強化
  • 出向制度の改革と情報遮断措置
  • 失敗体験に基づく教訓の組織的学習

③ 時代の要請を踏まえた法務・コンプライアンス機能の強化

  • 法務・コンプライアンス部門のリソース・権限の強化
  • 社内規程・業務手続の整備
  • 教育・研修制度の強化

④ インセンティブを意識した人事制度の見直し

  • インセンティブを意識した人事制度全般の検証・見直し
  • 本事案に関与した者に対する人事処分の検討
  • 人材の多様性と流動性の確保

調査報告書の内容および提言の詳細は下記リンク先からご覧いただけます。
https://www.group.dentsu.com/jp/about-us/governance/investigation_report.html

3.dentsu Japan改革委員会の設置

調査報告書の受領に先立ち、当社グループは、「仕事への取り組み方を刷新することで、すべてのステークホルダーに対する責任を果たす」ことを目的に、「dentsu Japan改革委員会」を設置し、委員長には、株式会社電通グループ 代表執行役 社長CEOの五十嵐が就任しています。五十嵐のメッセージは次のとおりです。

dentsuは日本地域において、仕事への取り組み方を刷新する「意識行動改革」を推進します。社会の変化とともにビジネスの競争ルールも大きく変わる中で、顧客だけでなく従業員・社会・株主など、会社を取り巻くすべてのステークホルダーにとって価値ある存在へ進化していくためです。

私たちの仕事への取り組み方には、目標達成にこだわるあまり、手段の適切性に対する認識の甘さが残っていたと言わざるを得ません。その認識の甘さが、目的達成よりも優先されるべき法令に関する知識および遵守意識の不足や、公正な取引を行うための業務プロセスの欠落につながっていました。また、不正を未然に防ぐための社内のチェック・モニタリング機能も不十分だったと考えています。

dentsuがこれからも社会への貢献を確実なものとしていくためには、社会に対する責任意識と透明性を高め、自分たちが守るべきルールやプロセスを明確にすることが必要不可欠だと考えています。意識行動改革は、これらの課題に対処する私たちの「新しい仕事への取り組み方」を規定し、実装するためのものです。私は不退転の覚悟で、経営陣・従業員とともにこの改革に取り組んでまいります。

株式会社電通グループ 代表執行役 社長CEO
dentsu Japan改革委員会 委員長
五十嵐 博

4.再発防止に関する方針 

意識行動改革に基づく、再発防⽌に関する方針は下記の通りです。なお、本日受領した調査報告書の提言を真摯に受け止め、実施済みまたは実施中の具体的な再発防止策は継続しつつ、今後具体策の追加により実効性を継続的に高めていきます。

① 公正な取引を担保する業務プロセスを見直すとともに、本事案の起点となったスポーツ領域やパブリック業務のガイドライン(スポーツビジネスガイドライン、パブリック業務ガイドライン)の策定・改訂や、出向先組織との利益相反を防ぐ情報管理措置の導入など、過去事案の分析から得たナレッジを事業運営に反映する仕組みを構築します。

② 既に制定済みのポリシーや社内報告体制を再点検し、内部統制の実効性の向上を図ります。特に各組織単位で案件毎のコンプライアンス推進を図るための幹部会議体やガバナンス担当者の設置など、チェックとモニタリングの機能を強化します。

③ 経営者から実務担当者まで、改めて全社でコンプライアンス教育を実施し、意識の向上を図るとともに、独占禁止法対応の研修の実施、相談窓口の設置に加え、dentsu Japan内のコンプライアンス担当組織の明確化を通して、内容の充実化と取り組みの継続性を担保します。

④ 正しい企業風土の規定と実現に向け、電通グループ行動憲章の周知徹底を行うとともに、企業風土の醸成に向け、全社を挙げて活動を強化します。また、ガバナンスが適切に機能するように、人事制度も見直します。

再発防止に向けた取り組みは下記リンク先からご覧いただけます。
https://www.group.dentsu.com/jp/about-us/governance/preventive_measures.html

以 上

【本件に関する問い合わせ先】
株式会社電通グループ グループコーポレートコミュニケーションオフィス 小嶋
Email:group-cc@dentsu-group.com

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