マネジメントメッセージ

代表取締役 社長執行役員 山本敏博の写真

顧客、パートナー、従業員、そしてすべての生活者の成長に寄与することによってより良い社会を実現することが電通グループの存在理由です。

代表取締役 社長執行役員山本 敏博

コロナ禍であらためて問われた電通グループの「存在意義」

2020年はコロナ禍の年であり、世界中の社会と生活者にとって、私たちの顧客やパートナーそして当社従業員にとって、大変厳しい1年となりましたが、電通グループは全力でこの危機に対処しました。

まず私たちのあらゆる事業の原動力である人財への対応です。よろしければこの動画「Women From Home」をご覧ください。電通インターナショナルアジアパシフィック チーフ・クリエーティブ・オフィサーであるマーリー・ハイミーが制作したもので、APAC地域の当社グループの女性従業員たちとその家族をサポートする私たちの取り組みが描かれています。コロナ禍にあって私たちは、従業員の心身の健康こそがグループ全体の最優先課題であると考えました。リモートワークの全社的導入には当初戸惑う声も聞かれましたが、すぐに各オペレーションを適応させました。組織のリーダーたちはITプラットフォームを通じて従業員に寄り添うことを重要視し、従業員同士の結びつきはむしろ強まりました。各チームはバーチャルな顧客提案手段を巧みに使いこなし、扱いの獲得・維持に成功しました。以前からの、グループ全体での労働環境改革および基盤整備の推進によって可能になったことでした。

次に顧客への対応です。当社グループは調査・分析・将来予測のケイパビリティに基づいた生活者インサイトを提供することで、コロナ禍による急速な環境変化への適応を迫られた顧客企業に大きく寄与しました。

そしてコミュニティへの対応です。当社グループは顧客企業とともにコロナ禍の地域社会に貢献するさまざまなソリューションを企画・実行しました。例えば中国が危機的状況にあった時、製薬産業の顧客と連携して無料のオンライン医療相談サービスを提供しました。またアジアの大きな打撃を受けた地域において、顧客とともに医療従事者への無料フードデリバリーを行いました。

この前例のない社会環境の下で、私たちはあらためて自らがどうあらねばならないのかを問い、確信しました。

「電通グループは、 顧客、パートナー、従業員、そしてすべての⽣活者の成⻑に寄与することによってよりよい社会を実現するために存在する」

この存在意義が指し示す使命を果たすことこそが、株主の皆様をはじめとするすべてのステークホルダーにとって、電通グループの価値を持続的に高めると信じます。

2020年の実績を振り返って

コロナ禍による影響は大きく、電通グループの2020年度売上総利益は8,350億円(為替影響排除ベース前年比9.8%減)、調整後営業利益は1,239億円(同10.6%減)となりました。迅速に対応してグループ全体でコストコントロールを徹底した結果、オペレーティング・マージンは14.8%となり、前年同期比0.2ポイント減にとどまりました。従業員の努力と創意工夫にあらためて敬意を表します。

しかし、営業損益は1,406億円の損失、(親会社の所有者に帰属する)当期損益は1,595億円の損失です。代表取締役社長執行役員として、私はこの結果への責任を認識しています。

一方2020年度は当社グループにとって、新規案件の獲得や、企業としての客観的評価において大きな成功を収めた年でもありました。

ジェネラーリやハイネケンといった既存顧客との取引関係が深まったことに加え、クラフト・ハインツの米国を除いた全世界の扱い、マクドナルドやネスレの中国での扱い、そして新たな顧客ガルデルマの全世界での扱いを任されることになりました。

顧客からの需要が高まっているブランドエクスペリエンスに関するコンサルティング業務においては、海外事業のCXMとクリエイティブサービスラインが多くの扱いを獲得しました。例えば、電通マクギャリーボウエンが、定型的な競合プロセスを経ずに既存顧客であったアメリカン・エキスプレスとの契約内容を大幅に拡大したことは、誇るべき結果です。

日本では、トヨタ自動車との合弁会社を2021年1月付で設立しました。真のデジタルトランスフォーメーションをテーマとして顧客とのパートナーシップを進化させる、マーケティング領域にとどまらない試みです。トヨタの全サプライチェーンにおけるマーケティングとデータマネジメントの強化を目的に、順調なスタートを切りました。

こうした顧客との長期的なパートナーシップ、信頼関係を築けたのは、人財の能力、仕事のプロセスの重視、そしてテクノロジーの総合的な成果であり、個々の専門知識が電通グループ全体に活かされていること、統合されたソリューションがグローバルな規模で顧客に貢献していることの証でもあります。

当社グループ各社の客観的評価はますます高まっています。

大手調査会社フォレスター社が発行する「ウェイブレポート」において、電通グループのマークルは「顧客データベースおよびエンゲージメント・エージェンシー部門」および「アドビ導入サービス提供社部門」で群を抜いた「リーディングカンパニー」として評価され、同じく電通グループのカラは「グローバル・メディア・エージェンシー部門」で「リーダー」のポジションを獲得しました。

株式会社電通の古川裕也がD&ADからクリエーティビティを高く評価されて「プレジデント・アワード」を受賞しました。

電通マクギャリーボウエンと360iは、エフィから「ウィニング・リード・エージェンシー」に選ばれ、電通グループは「ザ・モースト・エフェクティブ・エージェンシー・ホールディング・グループ」の一社に選定されました。

そしてこの場で、私たちの海外事業が、サステナビリティへの集中的な取り組みの結果、2015年に掲げた「2020年末までに100%再生可能エネルギーから電力を調達する」という意欲的な目標を達成したことをご報告します。加えて、「2030年までにCO2排出量 ネット・ゼロ・エミッション事業」になることを目指しています(CO2の絶対的な排出量を46%削減した上で、事業の運営上避けられない排出量に関しては、科学的根拠に基づいて公に認証された温室効果ガス除去プロジェクトを通じて相殺)。さらに、FTSE4Goodインデックスに、ESG基準を満たしたことで再度リストアップされました。

また当社グループは、2020年に世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で立ち上げられた「バリュー500」に参加し、従業員の多様性を尊重して障がい者のためのソリューション開発に取り組むことを表明しました。

「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」と
中期経営計画「構造改革と事業変革による持続的な成長の実現」

私たちは2020年8月に、以下の4つの明確な目標を掲げた「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」を先行して発表しました。

  • 合理的で機動的な組織構造
  • 恒久的なオペレーティングコストの低減
  • バランスシートの効率化の加速
  • 1〜3による長期的視点での株主価値の最大化

発表後すぐに行動に移りました。電通ジャパンネットワークの4つの事業領域への集約、電通インターナショナル160ブランドの6つのグローバルリーダーシップブランドへの統合のプロセスは着実に進んでいます。国内事業と海外事業を合わせて、2022年以降恒久的に年間750億円程度の費用削減を見込んでいます。保有していたリクルートホールディングス社株式の大半やその他の政策保有株をすでに売却し、2021年度第1四半期には2つの不動産物件の売却を発表しました。また2021年2月に300億円を上限とした自己株式取得を決定しました。構造改革および経費削減の詳細は、CFOメッセージでご紹介しています。
この「包括的な見直し」を内包した形で、私たちは2021年2月、中期経営計画「構造改革と事業変革による持続的な成長の実現」を発表しました。この中期経営計画で示したように、2021年は、構造改革をやり切りつつ事業変革に向けて大きく舵を切り、2022年以降に、成長の加速とマージンの改善を実現します。

その事業変革の中核をなすのが、「インテグレーテッド・グロース・ソリューション」です。マーケティング領域を超え、コンシューマー・インテリジェンスを起点に、クリエーティビティを武器として、グループの多様なケイパビリティを統合することで、あらゆる顧客体験に向けた統合ソリューションを生み出すことと定義しています。

当社グループは、世界の広告主トップ100社のうち、95社を顧客としています。「インテグレーテッド・グロース・ソリューション」を提供することで、マーケティング領域を超えて顧客の事業のトップラインの成長に貢献します。そこに電通グループが成長する大きなチャンスがあります。

また今日、企業のコア・コンピタンシーは決定的に変化しました。生活者がかつてないほど企業の社会的役割や価値観への関心を持って厳しい目を向ける中、あらゆる企業の経営者にとって、自社の事業がより良い社会の実現に寄与することと自社の事業の成長を両立させることが、最大の経営課題となりました。

この課題解決のために電通グループが提供するのが、データとテクノロジーの活用による独自のカスタマーインテリジェンスを基にした「電通サステナブル・ビジネス・ソリューション」であり、これが電通グループの成長にとってもうひとつの大きなチャンスです。
一方で企業の社会的な役割・価値についての厳しい目は、言うまでもなく電通グループ自身にこそ向けられています。顧客に社会的な価値を創造するソリューションを提供するのであれば、私たちはまず自らを厳しく省み、襟を正し、企業としての社会的責任を果たしていかなければなりません。

顧客の持続可能性を支援する「電通サステナブル・ビジネス・ソリューション」と、私たち自身の持続可能性の両方を同じ視線で統括するために、当社グループはウェンディ・クラークを議長とする「サステナブル・ビジネス・ボード」を設置しました。

このように中期経営計画に基づいた様々な取り組みは順調に進んでいます。進捗については継続的にご報告します。

持株会社体制

2020年に2つの事業部門を支える持株会社として成立した電通グループは、私たちのNORTHSTARとなるグループビジョン「an invitation to the never before.」を新たに策定しました。同時に世界中のグループ従業員から提案を募集し、行動規範であり、私たちの価値観を表明する、「THE 8 WAYS」を定めました。

145以上の国や地域で活動する独創的かつ多様な視点を持った6万4千人の従業員が、地理的・組織的な枠を超えて縦横にチームを編成すれば、誰からでも、どこからでもイノベーションが生まれます。この極端ともいえるコラボレーションが、一人ひとりの従業員の価値を進化させ、他に例を見ない多様で新しいソリューションを創造して、顧客のニーズに応えます。人財が多様であり、その一人ひとりが活躍できる職場を整えることは、私たち「one dentsu」の中核をなすものなのです。

海外事業が2020年9月に「電通インターナショナル」としてリブランディングされたのもこの一環です。国内事業と海外事業の一体化を象徴し、全世界の全従業員の結束を促します。顧客企業は、世界の電通グループ全体からベストの才能とケイパビリティにアクセスできることになります。

私たちは、2020年9月にウェンディ・クラークを電通インターナショナル社グローバルCEO兼(株)電通グループ執行役員として迎えました。広告事業をグローバルに運営することの複雑さをよく知るとともに、クライアント側の立場に立った経験も持つ非常に有能な経営者であり、顧客に「インテグレーテッド・グロース・ソリューション」を提供することで成長を見込む当社グループの計画を進めるにあたって極めて重要な役割を担います。すでに、従業員、顧客、そして電通グループ全体に大きな、そしてとてもよい影響が表れ始めており、ウェンディが海外事業を成長軌道に回復させるのにうってつけの人財であることが証明されつつあります。2021年3月には(株)電通グループの取締役にも就任し、当社グループ取締役会のダイバーシティにもつながりました。

2020年はマークル社の完全子会社化が実現した年でもありました。2020年の電通グループのEPSを数%改善させ、人財も維持できました。マークルは、「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー領域で売上総利益の50%を占める」という当社の目標に引き続き大きく貢献していきます。

未来へ

2021年、電通グループは創業から121 年⽬を迎えました。⼗⼲と⼗⼆⽀を組み合わせた干支六十年周期で言えば、今年の7⽉からは3巡⽬のスタートとなります。

次の60 年、あるいはこれからの120 年、「電通グループは、顧客、パートナー、従業員、そしてすべての⽣活者の成⻑に寄与することによって、よりよい社会を実現するための存在」であり続けながら、成長していきたいと考えています。

この厳しい時期をともに乗り越えてきた世界中の電通グループ従業員6万4千人に感謝の意を表し、クライアントの皆様、パートナーの皆様、そして私たちを支えていただいた株主の皆様に心から感謝致します。

引き続き、ご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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