電通総研、日本社会に対する人びとの実感を調査

― 「社会の健康診断」のための指標開発を推進 ―

株式会社電通グループ(本社:東京都港区、代表取締役社長執行役員:山本 敏博)の社内組織である電通総研(所長:谷 尚樹)は、望ましい社会の将来像を探索するプロジェクトを推進しており、その活動の一環として、人びとの実感に基づく「社会の健康診断」のための指標の開発を進めています。その指標の基盤は人びとの意識や価値観から見出されるべきとの考え方から、この度、社会に対する人びとの意識を捉えるパイロット調査を実施しました。
世界価値観調査や電通総研オリジナルの各種調査・レポート、各界有識者から得られた知見に基づき、社会の健康を測定するための21の視座※1を独自に設定し、全国18~79歳の男女6,000名を対象に行い、レポートとしてとりまとめました。本リリースでは、そのレポートの一部を「社会の健康リスク」「社会像選好」「こころの健康」の3つの側面から捉え直してご紹介します。なお、レポートの詳細は、電通総研ウェブサイト(URL:https://institute.dentsu.com/articles/1847/)をご参照ください。

1.社会の健康リスク
今、人びとは社会が抱える課題についてどのような問題意識を持っているのか。社会の健康リスクに関わる6項目※2は次のとおりです。数値が大きいほどリスクが高いことを示しています。

release-20210325-1.png
・リスク対応の社会的脆弱性 大地震、気候変動による災害、インフラの老朽化などさまざまなリスクに対して十分に対応・整備できていない
・国の余力不足 日本には余力がない
・地域社会の余力不足 自分が住む地域社会には余力がない
・家計の余力不足 自分の家計には余力がない
・出生数は減り続けていく 10年後、日本の出生数は減り続けている
・技術進歩で人間性が損なわれる世界になる 10年後、技術が進歩するほど、人間性が損なわれる世界になっている

2.社会像選好
未来社会のシナリオにはさまざまな選択肢があります。人びとがどのような社会を志向しているかに関わる項目は次のとおりです。

(注)グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。そのため、各割合の合計は必ずしも100%とならない場合があります。

● 地球環境対応のペース

release-20210325-2.png

●一極集中か多極分散か

release-20210325-3.png

●デジタル・ディバイド

release-20210325-4.png

●中央集権か地方分権か

release-20210325-5.png

3.こころの健康
社会課題やリスクを克服し、望ましい社会像に向けて、人びとがどのように感じているのか。こころの状態に関わる項目は次のとおりです。

●インクルージョンの達成

release-20210325-6.png

●他者への寛容

release-20210325-7.png

●社会への希望

release-20210325-8.png

●社会への不安

release-20210325-9.png

<社会の健康状態に関する考察>
今回の結果から、社会に対する人びとの実感として、国、地域社会、家計には「余力がない」と感じる人が過半数を占めるとともに、多くの人がこれからの社会に不安を感じ、希望を持てないでいる状況が明らかになりました。
「デジタル化による教育機会の拡大、不平等の解消」や「インクルージョンの達成」については意見がほぼ二分しました。一方、今後目指すべき社会像に関しては、「地球環境問題への取り組みを加速すべき」、「多様性に富む多極型社会を目指すべき」などの方向性に支持が集まりました。
また項目間のクロス分析を行ったところ、「希望がある」と感じている人は、次の7項目について、全体よりポジティブである傾向が見られました。
①他者の行動に対して寛容な態度をとりたい(全体76.1%に対して81.1%)
②デジタル化は、教育機会の拡大、不平等の解消につながる(全体50.1%に対して62.4%)
③自分の住む地域社会には余力があると思う(全体41.5%に対して60.5%)
④日本には余力があると思う(全体31.2%に対して53.7%)
⑤自分の家計には余力があると思う(全体38.2%に対して52.1%)
⑥10年後、年齢、国籍、性別などが制約にならない社会になっている(全体44.1%に対して51.1%)
➆10年後、技術が進歩するほど、人間性が大切にされる社会になっている(全体36.4に対して49.2%)

多くの人が希望をもてる社会の実現に向けた処方箋を描くためには、「他者への寛容」「デジタル化による教育機会の拡大、不平等の解消」「余力」「インクルージョン」「人間性」といった5つのキーワードが浮き彫りになったと言えます。

未来社会に向かうシナリオにはさまざまな選択肢があるでしょう。しかし上記のキーワードを踏まえ、未来に向けて広く議論し合意形成していくこと、そして多くの人びとがそのプロセスを共有することにより、ポジティブな連鎖が生まれ、未来に向けた希望も芽吹いてくるのではないでしょうか。

<パイロット調査の概要>
調査内容:社会の現状と今後
調査時期:2020年12月25日~26日
調査手法:インターネット調査
対象地域・対象者:全国・18~79歳の男女計6,000名(高校生を除く)
調査会社:株式会社 電通マクロミルインサイト

※1 社会の健康を測定するための21の視座

  • 現在の日本社会やあなたの生活について
    1.他者への寛容 2.デジタル・ディバイド 3.所有かシェアか 4.家族以外の信頼 5.政治参加 6.リスク対応の社会的脆弱性 7.国の余力 8.地域社会の余力 9.家計の余力 10.社会への不安 11.社会への希望
  • 10年後の日本社会予測
    12.出生数 13.インクルージョンの達成 14.他者への信頼 15.技術進歩と人間性
  • 今後、国際社会や日本が目指すべき方向性
    16.地球環境対応のペース 17.国際協調 18.一極集中か多極分散か 19.中央集権か地方分権か 20.平等か成果に応じた分配か 21.セーフティネットか税負担の少なさか

※2 社会の健康リスクに関わる6項目

  • 1.リスク対応の社会的脆弱性
    電通総研が2020年に発表した「日本の潮流 SSXで創る『余力社会』という未来へ 実現に向けた20のKeywords」の中で「ネクストクライシス」というキーワードを取り上げました。これからの時代は、災害、戦争、飢饉など幅広いリスクへの対応が必要不可欠であることから、社会の健康リスクの1つに設定しています。
    https://institute.dentsu.com/articles/1269/
  • 2.国の余力不足 3.地域社会の余力不足 4.家計の余力不足
    電通総研が2020年に発表した「日本の潮流 SSXで創る『余力社会』という未来へ 実現に向けた20のKeywords」の中で「余力」というキーワードを取り上げました。今後、日本がさまざまな課題に取り組んでいくためには、「余力」を備えておくことが重要であるという考えに基づいて設定した項目です。
    https://institute.dentsu.com/articles/1269/
  • 5.出生数は減り続けている
    電通総研は未来の日本社会を担う「次世代」に注目しています。社会が向き合わなければならない少子化の問題について、今後の出生数に対する人びとの考え方を、社会の健康リスクの1つに設定しました。(https://institute.dentsu.com/articles/130/
  • 6.技術進歩で人間性が損なわれる世界になる
    AI時代の人間社会はどのようなものであるべきかという課題に対して、人を中心に考えること、すなわち健全な社会を構築するためには「人間性重視」の視点が大切ではないか、という電通総研のメッセージから導いた項目です。(https://institute.dentsu.com/articles/130/

以 上

【本調査に関する問い合わせ先】
電通総研 山﨑、吉田、日塔
E-mail:d-ii@dentsu.co.jp
URL:https://institute.dentsu.com

【報道関係者 問い合わせ先】
株式会社 電通グループ グループコーポレートコミュニケーションオフィス
TEL:03-6217-6601
E-mail:group-cc@dentsu-group.com

株式会社電通グループでは、新型コロナウイルス対策の一環として、現在リモートワークを実施しておりますので、同期間のお問い合わせは、Eメールにてお願いいたします。

閉じる

このウェブサイトではサイトの利便性の向上を目的にクッキーを使用します。ブラウザの設定によりクッキーの機能を変更することもできます。詳細はクッキーポリシーをご覧ください。サイトを閲覧いただく際には、クッキーの使用に同意いただく必要があります。