2020年度第3四半期累計期間連結決算(IFRS)

株式会社電通グループ(本社:東京都港区、代表取締役社長執行役員:山本 敏博、資本金:746億981万円)は、本日開催の取締役会において、2020年度第3四半期累計期間(2020年1月1日~9月30日、以下「第3四半期累計」)の連結決算を確定しました。

【エグゼクティブサマリー】

  • 当第3四半期のオーガニック成長率は第2四半期から改善し、第3四半期累計のオペレーティング・マージンは前年同期に比べ120 bpsの増加となった。
  • 同期間にグループ全体におけるコストコントロール施策の効果が顕著に表れた。2020年度における7%のコスト削減目標(期初計画比)に対しても、上回って進捗しており、年間でも達成する見通し。
  • 8月に着手した“包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し”は、「合理的な事業構造による統合ソリューションの高度化」、「コスト構造の改革」、「バランスシートの効率化加速」の各分野で、2021年2月の詳細発表に向けて着実に進捗している。合理的な事業構造について、国内事業では現在の事業を4つの分野を軸とした構成へ再編し、海外事業では保有する160の事業ブランドを6つのリーダーシップブランドに集約・最適化していく。また株主価値向上に向けてB/S上の非事業資産の見直しも進めている。
  • グループ全体の事業トランスフォーメーション計画の策定も進めている。国内事業では一部前倒しで実行しており、(株)電通において実施した社員への新しいキャリアの選択肢の提供に紐づく早期退職プログラムはその1つ。海外事業でも、12月末までに具体的な施策を実施する予定。
  • 格付投資情報センター(R&I)から「AA-」の格付けを取得している健全なバランスシート、現預金2,884億円に加え、5,451億円の信用枠を確保し、十分な資金流動性を維持。
  • 2020年度通期連結業績予想は上記の海外事業での施策の影響も反映し、2020年度内に発表する予定。
  • 2020年度の1株当たり期末配当予想は23.75円とした。

【第3四半期累計(1-9月)業績】

(△は減少)

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※「調整後営業利益」、「オペレーティング・マージン」、「調整後当期利益」については後述の「用語の定義」を参照。

<第3四半期累計業績の概要>

  • 当第3四半期累計の連結業績は、コロナ禍の影響による世界的な景気後退と、それに伴う広告市場の縮小の中で、売上総利益は前年同期比で10.7%減少したものの、事業構造改革および景気後退の影響を緩和するために今年から着手した各種コストコントロール施策の効果により、オペレーティング・マージンは前年同期から120 bps増加して12.6%となった。
  • 国内事業は、デジタルソリューション領域は好調を維持したが、マス4媒体を中心とした広告市場全体の落ち込みにより、減収減益となった。コストコントロールで一部相殺するも、オペレーティング・マージンも低下した。
  • 海外事業は、コロナ禍の影響によりEMEA、Americas、APAC(アジア太平洋、日本を除く)の全地域でマイナスのオーガニック成長となり、売上総利益は前年同期比で減少したが、第2四半期を底に第3四半期は改善した。調整後営業利益はコストコントロールと事業構造改革の効果で大幅増となり、オペレーティング・マージンも大きく向上した。

<主要科目別の業績>

  • 売上総利益(6,019億円、前年同期比△10.7%、為替影響排除ベース同△9.3%)
    • 売上総利益の減少の主な内訳は、買収効果(+117億円)、為替影響(△107億円)、オーガニック成長(△733億円、成長率〈連結△10.9%、国内事業△7.9%、海外事業△12.9%〉)。
    • 国内事業:デジタルソリューション領域は好調に推移したが、マス4媒体市場の縮小による影響で、減収(2,551億円、前年同期比△7.7%)。
    • 海外事業:コロナ禍の影響でEMEA、Americas、APACの全地域がマイナスのオーガニック成長となり、減収(3,471億円、同△12.8%、為替影響排除ベース同△10.4%)だが想定の範囲内。相対的に堅調なCXM事業によって第2四半期から第3四半期にかけて改善。
    • デジタル領域構成比は連結で52.7%まで拡大(前年同期差+490 bps)。
  • 調整後営業利益(758億円、前年同期比△0.9%、為替影響排除ベース同△0.3%)
    • 国内事業:減収により減益(437億円、前年同期比△22.0%)。
    • 海外事業:コストコントロールや事業構造改革の成果により増益(358億円、前年同期比+43.1%、為替影響排除ベース同+46.1%)。
    • コロナ禍による業績影響を緩和するべく、第1四半期から実施している国内外での不要不急の出張や交際費の削減、発注内容の見直し、業務の効率化、M&Aの延期による関連費用の抑制に加え、第2四半期からは当社執行役員の報酬減額などのコストコントロールも行っており、連結ベースでは調整後営業利益はほぼ前年同期並み。2020年度における7%のコスト削減目標(期初計画比)に対しても、上回って進捗している。
  • オペレーティング・マージン(12.6%、前年同期差+120 bps、為替影響排除ベース同+110 bps)
    • 国内事業:生産性の向上や各種コスト削減施策に取り組むも、減収をカバーできず低下(17.2%、前年同期差△310 bps) 。
    • 海外事業:調整後営業利益と同じ要因で大幅改善(10.3%、同+400 bps、為替影響排除ベース同+400 bps)。
  • 調整後当期利益(親会社の所有者に帰属)(393億円、前年同期比△1.8%)
    • 増加要因は、主に調整後営業利益の増。
    • 基本的1株当たり調整後当期利益は141.23円(前年同期は142.21円)。

【第3四半期累計 業績の詳細】

<地域別の状況(国内)>

当第3四半期累計期間における国内事業のオーガニック成長率は△7.9%、第3四半期は△14.7%となった。コロナ禍の影響は大きく、顧客企業による広告出稿が大きく落ち込んだ。しかしながら、デジタルソリューション領域では、顧客企業によるデジタルトランスフォーメーション需要が継続しており、当期間を通して好調に推移した。会社別では、(株)電通が大幅な減収となったものの、電通国際情報サービス(ISID)や電通デジタルなどが貢献した。  2月から開始した迅速なコストコントロールと経費適正化、ならびに2017年度から実施している労働環境改革による生産性の向上の効果はあったが、減収を相殺するには至らず、調整後営業利益、およびオペレーティング・マージンも低下した。

国内でも事業トランスフォーメーションを推進すべく、第3四半期には、(株)電通で、社員に新しいキャリアの選択肢を提供することに紐づく早期退職プログラムを実施し、今後230名の早期退職者を予定している。この退職者は個人事業主となり、同社が2021年1月に新設する「ニューホライズンコレクティブ合同会社」(以下、NH社)と最長10年間の業務委託契約を結ぶことになる。これにより、当第3四半期末に早期退職加算金の引当金72億円と、NH社にかかる将来の損失の見積もりに対する引当金152億円の合計225億円を事業構造改革費用として計上した。NH社は、個人が年齢に捉われることなく、社会において長く価値を提供できる新しい選択肢「ライフシフトプラットフォーム(LIFE SHIFT PLATFORM)」の具現化を目的とした会社で、同社と契約する個人事業主に「安心」と「チャレンジ」の両立をかなえるためのあらゆる機会を提供していく。NH社には、将来的には当社グループへの持続的な収益貢献を期待している。

※「NH社」および「LIFE SHIFT PLATFORM」の詳細は(株)電通が同日発表したニュースリリースをご参照下さい。

第4四半期は昨年に複数の大型イベントによる収益貢献があったことから、成長率の見え方としては厳しくなるものの、事業そのものは改善傾向にある。今後も当社グループは、コストコントロールを進める一方で、顧客企業によるデジタルトランスフォーメーションの加速に対応していく。また、専門性を持つグループ会社間の連携強化を図ることで、より高度な統合ソリューションの開発・提供に努め、収益の多様化と継続的な成長を実現していく。

国内事業 会社別売上総利益の状況(IFRSベース)

(単位:百万円、△は実額が減少)

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※「地域電通」は100%連結子会社の電通東日本、電通西日本、電通九州、電通北海道の4社の合計。

国内事業 業務区分別売上高の状況(IFRSベース)

(単位:百万円、△は実額がマイナスまたは減少)

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※1. インターネット(旧集計)に加え、マスメディアに含まれるインターネット広告売上(2020年1-9月で4,572百万円)を加算し、重複計上した数値。
※2. IFRSベースでは、日本基準と売上計上のタイミングに差がある。上表では、日本基準を記載し、IFRSベースとの差額は「連結調整等」で調整。
※3. 海外グループ会社への売上や会計基準の違いによる調整等を含む。
※4. インターネットと各マスメディアで重複計上された数値。

<地域別の状況(海外)>

当第3四半期累計期間における海外事業のオーガニック成長率は△12.9%、第3四半期は△14.6%となった。コロナ禍による第3四半期の落ち込みはEMEA、Americas、APACの全地域で見られたものの、当社グループが想定していた範囲内で収まった。

3つの事業ライン別のオーガニック成長率は、メディアが△16.1%、クリエイティブが△16.5%となったものの、CXM(顧客体験マネジメント)は△4.1%に留まった。第3四半期においては3ライン全てで新規案件獲得が続いており、顧客需要の緩やかな回復を背景に、今後の成長率の改善を見込む。

同期間におけるオペレーティング・マージンは、主にコロナ禍対応のためのコスト削減や事業構造改革の進捗により、400 bps向上した。第4四半期は、各国政府による支援策が段階的に減少していくタイミングであることからコストの増加を想定しているが、年間でもオペレーティング・マージンは前年比で改善すると見ている。コスト削減施策を全ての市場、全ての組織レイヤーで実施しており、その内容には裁量的支出の削減や発注内容の見直しなどが含まれている。また、2019年12月に発表した海外7市場での事業構造改革のコスト削減効果(2020年度見込み4,500万英ポンド(1-9月平均レート換算:約61億円))は計画を上回って推移している。

海外事業 地域別のオーガニック成長率(△はマイナス成長)

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EMEAの状況:全ての市場で顧客企業の広告投資減少による影響を受けた。プラス成長はロシアのみで、ドイツ、スイス、デンマーク、スウェーデンは1桁のマイナス成長となった。オランダとフランスは相対的にメディア事業の割合が多いため、引き続き大きなマイナス成長となった。スペインはコロナ禍の影響でクリエイティブ関連のプロジェクトが遅れ、マイナス成長となった。

Americasの状況:米国は収益に占めるCXM事業の比率が高いことから、△9.6%のマイナス成長と、底堅く推移した。米国では、消費財の顧客企業によるメディア投資は増加傾向に転じたものの、他のセクターにおけるメディアやクリエイティブへの投資意欲は未だ低迷している。ただ直近では、Americasにおいて新規顧客獲得が続いており、モメンタムに回復の兆しが見えている。

APACの状況:台湾やタイなど中規模の市場では想定を上回って推移したが、全体としてはコロナ禍による顧客企業の広告投資減少の影響を受けた。中国では第3四半期に2つの大型クライアントの新規獲得を成し遂げた。オーストラリアでは、第3四半期から特にCXM事業のモメンタムが強くなっており良い兆しが見えている。

【のれんの減損テスト】

のれんの減損テストは通常、年度末のみ実施するが、のれん減損の兆候とみなされる事象が発生した場合は、その頻度を高める必要がある。当社グループにとって、コロナ禍の世界経済への拡大はこれに該当するため、2020年度においては毎四半期末にのれんの減損テストを実施している。第3四半期末においてのれんの減損の計上は無かったが、第4四半期末においても同テストを実施する予定である。

【包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し】

“包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し”は、「合理的な事業構造による統合ソリューションの高度化」、「コスト構造の改革」、「バランスシートの効率化加速」、「これらによる長期的視点での株主価値の最大化を図ること」を目的に2020年8月から着手しており、具体的に進捗している。

事業構造の合理化の観点では、海外事業において既に3つの事業ラインへの集約を完了して稼働しているが、これに加え、現在の160の事業ブランドを顧客企業の成長への貢献の観点から最適化すべく、6つのリーダーシップブランドへと集約する。また、国内事業は、現在の事業を4つの分野を軸とした構成へ再編することでコストの最適化と効率的なコラボレーションを実現していく。

コスト構造の改革の観点では、当社グループの世界中のケイパビリティーの特定の拠点への集約、オフショアリングの更なる活用、オフィススペースの最適化、保有不動産の見直しを進めている。

バランスシートの効率化の観点では、長期的な株主価値の最大化を目的に、バランスシートに計上されている非事業資産の徹底的な見直しを進めている。

当見直しにより必要と判断された各施策を確実に実行することで、当社グループの変革を加速し、世界トップレベルのサービス、ソリューションを顧客企業に提供していく。2021年2月には当見直しの結果を発表する予定である。

【2020年度業績の見通し】

第3四半期に多くの新規顧客獲得はあったものの、第4四半期においても、引き続きコロナ禍が業界全体の需要減退を引き起こしており、回復のタイミングやレベルが市場によって異なることから同四半期の業績をより慎重に見ていること、また、検討している追加施策の費用計上額およびコスト削減効果を精査中であることから、現時点では2020年度通期連結業績予想の開示を控える。

一方、重要な2つのKPIである連結ベースの「オーガニック成長率」と「オペレーティング・マージン」の2020年度のガイダンスは、それぞれ年間で「△12.5%〜△12.0%」と「13.0%〜13.5%」とする。 2020年度通期連結業績予想は2020年12月末までに開示する予定。

<利益の詳細>

調整後営業利益から営業利益への調整額

(単位:百万円、△は実額がマイナスまたは減少)

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調整後当期利益から当期利益への調整額

(単位:百万円、△は実額がマイナスまたは減少)

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営業利益以下の損益項目

(単位:百万円、△は実額がマイナスまたは減少)

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四半期別実績

(単位:百万円、△は実額がマイナスまたは減少)

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※1. 「セントラルコスト」については当資料P8の「用語の定義」を参照。
※2. 当期利益および調整後当期利益は親会社所有者帰属分。

注記:
当資料上の前年同期数値は、比較可能性を高めるため全てプロフォーマベース(賞与平準化後)の数値を使用しており、開示済みの前年同期実績数値とは異なる。また、前年同期の国内事業の調整後営業利益およびオペレーティング・マージンは、 2020年1月に持株会社を設立したことに伴い、2020年からは持株会社に計上されるグループ全社の活動に付随する費用(セントラルコスト)に相当する2019年分を開示済みの実績数値から控除することで比較可能性を高めている。

用語の定義:
※1. 『調整後営業利益』は、営業利益から、買収行為に関連する損益および一時的要因を排除した、恒常的な事業の業績を測る利益指標。
買収行為に関連する損益:買収に伴う無形資産の償却費、M&Aに伴う費用、被買収会社に帰属する株式報酬費用、完全子会社化に伴い発行した株式報酬費用。
一時的要因の例示:事業構造改革費用、減損、固定資産の売却損益など。
※2. 『オペレーティング・マージン』は、「調整後営業利益÷売上総利益」で算出。
※3. 『親会社の所有者に帰属する調整後当期利益』は、当期利益(親会社所有者帰属分)から、営業利益に係る調整項目、関連会社株式売却損益、アーンアウト債務・買収関連プットオプション再評価損益、これらに係る税金相当・非支配持分損益相当などを排除した、親会社所有者に帰属する恒常的な損益を測る指標。
※4. 『セントラルコスト』は、事業セグメントに計上されない、グループ全社の活動に付随する費用。

【参考資料】

参考① 2020年度第3四半期累計の連結業績ハイライト表

(単位:百万円、△は実額がマイナスまたは減少)

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※1. 売上高は当社グループが顧客に対して行った請求額および顧客に対する請求可能額の総額(割引および消費税等の関連する税金を除く)。売上高の情報が財務諸表利用者にとって有用であるとの観点から、IFRSに準拠した開示ではないものの、自主的に開示している。
※2. 当社グループの収益の内訳は、主に各種メディアへの広告出稿によって得られる手数料、およびクリエイティブ・サービスを含む広告制作や各種コンテンツサービス等のサービスの提供に対する広告主等からの報酬。広告制作やその他の広告サービスによる収益は、当社グループがこれらサービスに対する報酬として広告主およびその他のクライアントから受領する対価から原価を控除した純額、あるいは定額または一定の報酬対価により計上している。  なお、広告業以外の事業および広告業の一部に係る取引は、収益および原価を総額表示している。
※3. 為替影響排除ベース:当期累計実績と、前期実績などの比較数値を直近決算為替レートで洗い替えた数値との比較のこと。

参考② 第3四半期累計 売上総利益の詳細情報

  • オーガニック成長率:連結△10.9%、国内事業△7.9 %、海外事業△12.9%
    (前年同期:連結△1.0%、国内事業△0.9%、海外事業△1.0%)
  • デジタル領域構成比:連結52.7%、国内事業33.2%、海外事業67.1%
    (前年同期:連結47.8%、国内事業28.6%、海外事業61.1%)
  • 海外事業構成比:57.6 %(前年同期:59.0%)

参考③ 四半期別オーガニック成長率の推移

(売上総利益ベース、%、△はマイナス成長)

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参考④ 四半期別オーガニック成長率の推移(海外地域別)

(売上総利益ベース、%、△はマイナス成長)

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参考⑤ 連結決算の範囲

(2020年9月末時点の会社数、カッコ内は2019年9月末)

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以 上

(注)将来の事象に係る記述に関する注意
本資料上の業績予想については、現時点で入手可能な情報に基づき当社が判断をしたものであり、潜在的なリスクや不確定要素等の要因が内在しています。そのため、さまざまな要因の変化により、実際の業績はこれらの予想数値と異なる可能性があります。

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