中期経営計画

構造改革と事業変革による持続的な成長の実現

2020年、世界はパンデミックの大きな影響を受けました。それによって起きた社会の変化は瞬く間に浸透し、それに伴うデジタル化は著しく進み、企業と個人の社会的責任に対する関心が高まりました。

電通グループも自らの変革を加速させる必要があると認識し、“包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し”に着手しました。これは組織を合理化し、無駄を排除することで、オペレーティングコストの削減とバランスシートの効率化を進め、株主価値の最大化を目指すものです。

その包括的な見直しの結果を受け、2021年2月に2021〜2024年度を対象期間とする「中期経営計画―構造改革と事業変革による持続的な成長の実現―」を発表しました。本計画では、変革を実現し持続的に企業価値を高めるために、以下の4つのポイントに注力することとし、それぞれにKPIとターゲットを設けています。

  • 事業変革と成長
  • オペレーションとマージン
  • 資本配分と株主還元
  • ソーシャルインパクトとESG

この計画は、電通グループの4年間の成長、収益性の確保、および持続可能な社会における当社グループの役割をステークホルダーに示すものです。

アクションプラン

当社グループの顧客企業に限らず、企業が事業の価値を高めていこうとする際に直面する課題はますます複雑に、高度になってきています。それに伴い、当社グループもケイパビリティを拡充する必要がありました。“beyond advertising/広告領域を超える”ソリューションの提供は、以前から、グループ全体にわたって取り組んでいたことです。

社会のデジタル化は、事業のデジタルトランスフォーメーションを通じた生活者との関係構築に対する企業の投資意欲を高めました。その領域をカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーと当社グループでは呼称しています。当社グループにとって最も高い成長率を示し、高いポテンシャルを感じさせる領域です。デジタル化の加速は、マーケティング・コミュニケーションとカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーの統合ソリューションをグローバルな規模で提供する電通グループにとって、まさに追い風と言えるでしょう。

また、カスタマートランスフォーメーション&テクノロジーが成長することで、顧客企業のCEO、CTO、CIO、COOといったカスタマーエクスペリエンスに関わる全ての経営幹部との関係も構築されることから、当社にとってさらにビジネスの機会が広がることになります。カスタマートランスフォーメーション&テクノロジーとマーケティング・コミュニケーション領域を統合し、高度化した顧客企業のマーケティング課題・事業課題を総合的に解決する「インテグレーテッド・グロース・ソリューション」を顧客企業に提供することで、当社グループの成長を実現していきます。

加えて、顧客企業に高品質なソリューションを高効率な体制で提供するにあたっては、ニアショアおよびオフショアの利用を促進し、セキュアなリモートワーク環境の従業員への提供とオフィス規模の最適化、組織の合理化によるチーム間の活発な協業を推進しています。

2021年度末までに大型の非事業資産売却も実施しました。今後、資産ポートフォリオをさらにスリム化し、資産売却から得られた資金を事業成長に投資していくことでROEの向上を目指しています。

計画2年目、事業変革による持続的な成長の実現に向けて

2024年度までの期間中、毎年、中期経営計画の内容を見直すことで、めまぐるしい事業環境の変化に柔軟性をもって対応していく予定です。

計画の初年度である2021年度は、シンプルな組織構造への転換とコスト削減を推進し、収益性を改善することに成功しました。また、過去最高の売上総利益、調整後営業利益と営業利益を記録しました。そうした成果を踏まえ、2022年度を「事業変革の加速と持続的成長」のフェーズへと移行する年と位置付け、2024年度までのターゲットを更新しました。

既存事業の成長を示すオーガニック成長率については、年平均成長率を3~4%としていたものを2022年度から2024年度までは4~5%を目指すよう上方修正しました。収益性の指標となるオペレーティング・マージンは、2024年度までの目標としていた17.0%を計画初年度に達成したことから、2023年度までは17.0~18.0%のレンジで事業を運営し、2024年度に18.0%を確保することを新たなターゲットとしました。

ソーシャルインパクトとESGについてもターゲットを新たに追加しました。従業員のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの強化については、2030年度までに、グループ全体の女性管理職の比率を30%(電通ジャパンネットワーク 25%、電通インターナショナル 50%)に到達させるという具体的なターゲットを加えることで、実効性をより高めていく考えです。

その他詳細については、図「中期経営計画4つの柱:KPIと更新後のターゲット」をご覧ください。

中期経営計画4つの柱:KPIと更新後のターゲット

成長を重視し、長期的な価値向上に向けた資本配分

2024年度までの資本配分の考え方を2022年2月に発表しました。

設備投資には3年間で700億円を投資します。オペレーション、ケイパビリティ、テクノロジー基盤、ニアショア・オフショアへの投資などが対象です。

M&Aを通じた成長投資には、同期間中、最大で2,500~3,000億円の投資原資を準備します。高成長領域であるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーに焦点を当てる考えです。

自社株式の取得による株主への還元も、2021年度の総額300億円に続き、2022年度も400億円を上限として実施することに決定しました。

以上の資本配分計画を通じて、あらゆるステークホルダーにとっての企業価値の最大化を目指します。

当社グループにとって「持続的な成長」の実現は、2024年度までに限った重点課題ではありません。その先の未来も見据えて、絶え間ない「変革」を続ける企業体質の構築と価値創造こそが中期経営計画の本質です。