ESG

コーポレートガバナンス

当社グループは、2021年2月に公表した「中期経営計画」を達成するとともに、顧客、パートナー、従業員、そしてすべての生活者の成長に寄与することによって、より良い社会を実現することを目指します。そのために、最良のコーポレートガバナンスを追求し、意思決定の透明性・公正性の確保、経営資源の有効な活用および迅速・果断な意思決定を通じて、当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図っていきます。

ガバナンス強化の変遷
ガバナンス強化の変遷

取締役メッセージ

取締役(独立社外取締役)松井 巖
取締役(独立社外取締役)
松井 巖

厳正なガバナンスの実践を確保し、
電通グループの企業価値向上に寄与します

「(株)電通グループ」が誕生してから1年以上が経ちました。

日本の電通ジャパンネットワーク各社と海外の電通インターナショナル(旧・電通イージスネットワーク)とを統合し、その相乗効果によって業績向上を目指したものの、新型コロナウイルスの蔓延など厳しい経営環境が続き、なかなか思うような成果を上げることができない状況にありました。

そうした中、電通グループは電通史上かつてないほどの規模で事業改革に取り組んでいます。もちろん、この改革を成功させるためには経営陣・従業員の相互が「改革に向けた目的意識」を共有すること、そして改革がグループ全体としての適正なガバナンスの下で遂行されることが重要になります。

私たち社外取締役は各人の多様な知見を基に、株主をはじめ様々なステークホルダーの方々の視点を踏まえながら厳正なガバナンスの実践を確保し、電通グループの成長および企業価値向上に寄与していきます。

取締役・監査等委員 大越 いづみ
取締役・監査等委員
大越 いづみ

業績の回復基調とガバナンス強化のために
グループを監査監督しています

2020年度に発足した(株)電通グループの取締役・監査等委員に就任いたしました。世界同時の急激な環境変化を契機に、取締役会では「包括的な見直し」の取り組みにおいて、厳しい経営判断が続きました。特に、グループ中期経営計画とその中核となる構造改革・事業変革プラン策定では、社会的存在意義が問われているという強い課題認識の下で多角的に検討し、ステークホルダーの皆様にいち早く情報を開示することを目指しました。

監査等委員会では、経営陣の意思決定プロセスにおける透明性を確保し、その適切性を検証・評価するとともに、企業価値の持続的向上と健全な財務体質の確保、経営資源の適切配分を経営陣に働きかけてきました。

今後も、経営陣が中期経営計画を着実に遂行してグループ全体で業績を回復基調に乗せられるよう、同時に、コーポレートガバナンスの原則に基づいて内部統制や内部監査、コンプライアンスやリスクマネジメントの強化を促進するよう監査監督していきます。更に、機動的な経営と迅速な意思決定を支える優れたガバナンス体制の追求と進化にも責任を果たしたいと考えています。

取締役・監査等委員(独立社外取締役) サイモン・ラフィン
取締役・監査等委員(独立社外取締役)
サイモン・ラフィン

企業文化と人事管理について精査し、
加速的な構造改革を支えていきます

2020年は、新型コロナウイルスが世界的に流行し、多くの国でロックダウンするなど厳しい年でした。取締役会および各委員会は、ほとんどの会議にビデオ会議システムを使用しなければならず、海外在住の取締役は日本に出張することができませんでした。このため、優れたガバナンスを実現するには困難が伴いましたが、私たちはこのような課題にもうまく対処してきたと思います。

当社グループには、国内事業と私が委員長を務める海外事業に関する2つの監査委員会が設置されており、重大な問題が発生した場合には監査等委員会で議論を重ねることにより、十分に機能しています。また、監査等委員会のみでは精査が不可能な監査・統制事項については、監査委員会で詳細なレベルで精査します。

現在、企業文化と人事管理に着目しています。従業員を採用・雇用し、育成や成長を促すことを保証するためには、適切なリスクテイクを奨励し、起業家精神とリスク管理を可能にする統制とのバランスを取る必要があります。これを実践することは、長引くロックダウンや在宅勤務、また多くのブランド、ビジネス、チームを再編する加速的な構造改革への対策にもつながります。

コーポレートガバナンス推進体制

ガバナンス体制

当社は、監査等委員会設置会社を採用しており、取締役会から業務執行者への権限委譲によって、迅速で果断な経営判断を促すとともに、少なくとも4名の独立社外取締役を含む取締役会による業務執行に対する監督機能の強化および監査と内部統制の実効性の向上によって、一層の企業価値の向上を図っています。

そして、当該体制の下、株主、顧客、従業員および地域社会等のステークホルダーに対する責任を果たすとともに、当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図ることを目的として、以下の基本方針に則って、実効性あるコーポレートガバナンスを実現しています。

  • 株主の権利を尊重し、平等性を確保する
  • ステークホルダーの利益を考慮し、適切に協働する
  • 会社情報を適切に開示し、透明性を確保する
  • 取締役会による業務執行に対する監督機能の実効性を向上させる
  • 中長期的な株主の利益と合致する投資方針を有する株主との間で建設的な対話を行う
コーポレートガバナンス体制
コーポレートガバナンス体制

2021年7月1日現在

1取締役会

当社は、監査等委員会設置会社というガバナンス形態を採用しており、重要な業務執行の一部を取締役会から執行役員に権限委譲し、迅速で実効性の高い業務執行を実現しようとしています。取締役会は、業務執行に対する監督機能を果たすとともに、当社グループの経営戦略の策定、重要な経営上の意思決定、執行役員の選任等、当社グループの経営の根幹となる事項を決定しています。取締役会は、現在13名の取締役から構成されていますが、社内出身の取締役のみならず、現在5名就任している独立社外取締役をはじめ、高い見識や専門性を備えた人財が取締役に就任しています。

取締役会における主な議題(2020年度18回開催)

  • 中期経営計画
  • 包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し
  • グループ資本政策
  • 内部統制・リスク委員会報告
  • 政策保有株式の保有適否

2監査等委員会

監査等委員である取締役の全員により構成されている機関で、監査等委員でない取締役や執行役員の業務執行に対し、適法性や妥当性の観点から、内部統制部門や会計監査人との連携を図りつつ、監査、監督を行っています。当社では、現在5名の監査等委員である取締役が就任しており、1名は社内出身の取締役、4名は独立社外取締役(うち2名は財務・会計に関する相当程度の知見を有しています)です。

監査等委員会における主な議題(2020年度16回開催)

  • 監査等計画の策定
  • 内部統制システムの構築・運用状況
  • グループ会社の監査の状況
  • 会計監査人の報酬同意、評価および再任
  • 会計監査人の監査の相当性の判断
  • 取締役の選任・報酬に関する意見

3指名諮問委員会

指名・報酬諮問委員会を改組し、取締役会の諮問機関として2020年4月に設置した機関です。社外取締役を委員の過半数とし、委員長を独立社外取締役として構成しています。取締役・執行役員の指名・後継者計画については、取締役会からの諮問に基づいて本委員会にて審議・答申を行った上で、取締役会にて付議・決定します。

諮問委員会における主な議題(2020年度5回開催)

  • 指名方針・後継者計画方針に関する審議答申
  • 後継者計画に関する審議答申
  • 取締役・執行役員候補者に関する審議答申

4報酬諮問委員会

指名・報酬諮問委員会を改組し、取締役会の諮問機関として2020年4月に設置した機関です。社外取締役を委員の過半数とし、委員長を独立社外取締役として構成しています。取締役・執行役員の報酬については、取締役会からの諮問に基づいて本委員会にて審議・答申を行った上で、取締役会にて付議・決定します。

指名諮問委員会における主な議題(2020年度6回開催)

  • 業績連動型株式報酬制度改正に関する審議答申
  • 報酬に関する第三者機関による経営者報酬サーベイの実施
  • 取締役・執行役員個別報酬案に関する審議答申

参考:指名・報酬諮問委員会

取締役会の諮問機関として2019年7月に設置した機関で、社外取締役を過半数とし、委員長を独立社外取締役としていました。同委員会の指名・選解任に関する機能と報酬の決定に関する機能とを分離することにより、同委員会をより専門性の高い諮問機関へと改編することとし、2020年4月1日、同委員会を指名諮問委員会および報酬諮問委員会へと改編しました。

指名・報酬諮問委員会における主な議題(2020年度3回開催)

  • ・後継者計画方針に関する審議
  • ・取締役のスキルマトリックスに関する審議答申

5電通ジャパンネットワーク・ボード

6電通インターナショナル・ボード

当社グループ会社の国内事業に関する重要事項の審議を行う「電通ジャパンネットワーク・ボード」(社内カンパニーである電通ジャパンネットワーク内に設置)と、当社グループ会社の海外事業に関する重要事項の審議を行う「電通インターナショナル・ボード」を設置することにより、業務執行体制を国内事業部門と海外事業部門に分け、それぞれに収益責任と権限を委譲しています。

取締役のスキルマトリックス

取締役のスキルマトリックス

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役員一覧

代表取締役 山本 敏博

略歴

1981年4月
当社入社
2008年7月
当社コミュニケーション・デザイン・センター EPM
2009年4月
当社コミュニケーション・デザイン・センター センター長
2010年4月
当社コミュニケーション・デザイン・センター センター長兼当社MCプランニング局長
2011年4月
当社執行役員
2014年6月
当社取締役執行役員
2016年1月
当社取締役常務執行役員
2016年3月
当社常務執行役員
2017年1月
当社社長執行役員
2017年3月
当社代表取締役社長執行役員(現任)

代表取締役 桜井 俊

略歴

1977年4月
郵政省入省
2008年7月
総務省総合通信基盤局長
2012年9月
同 情報通信国際戦略局長
2013年6月
総務審議官(郵政・通信)
2015年7月
総務事務次官
2016年9月
三井住友信託銀行株式会社 顧問
2018年1月
当社執行役員
2018年6月
東急不動産ホールディングス株式会社社外取締役
2019年3月
当社取締役執行役員
2020年1月
当社取締役副社長執行役員
2020年3月
当社代表取締役副社長執行役員(現任)

代表取締役 ティム・アンドレー

略歴

2002年3月
National Basketball Association Senior Vice President Communications & Marketing
2005年12月
BASF Corporation CCO(Chief Communication Officer)
2006年5月
Dentsu America, LLC CEO
2008年6月
当社執行役員
2008年11月
Dentsu Holdings USA, LLC President & CEO
2012年4月
当社常務執行役員
2013年3月
Dentsu Aegis Network Ltd. (現 Dentsu International Limited) Executive Chairman
2013年4月
当社専務執行役員
2013年6月
当社取締役専務執行役員
2018年1月
当社取締役執行役員
2019年1月
Dentsu Aegis Network Ltd. (現 Dentsu International Limited) Executive Chairman & CEO
2020年1月
当社取締役副社長執行役員
2020年9月
Dentsu International Limited Executive Chairman(現任)
2021年3月
当社代表取締役副社長執行役員(現任)

取締役 五十嵐 博

略歴

1984年4月
当社入社
2013年4月
当社営業局長
2017年1月
当社執行役員
2018年3月
当社取締役執行役員(現任)
2020年1月
電通ジャパンネットワーク 社長執行役員CEO(現任)
株式会社電通 代表取締役社長執行役員(現任)

取締役 曽我 有信

略歴

1988年4月
当社入社
2015年6月
当社経理局長
2017年1月
当社執行役員兼経営企画局長
2017年3月
当社取締役執行役員(現任)
2020年3月
株式会社CARTA HOLDINGS 監査役(現任)

取締役 ニック・プライデイ

略歴

1996年8月
Ernst & Young Audit Manager
2003年8月
Aegis Group plc Director
2009年9月
Aegis Group plc CFO
2013年4月
Dentsu Aegis Network Ltd.(現 Dentsu International Limited)CFO
2018年1月
当社執行役員
2020年3月
当社取締役執行役員(現任)
2020年10月
Dentsu International Limited CFO(現任)

取締役 ウェンディ・クラーク

略歴

2001年2月
GSD&M, SVP/Director
2004年1月
AT&T SVP
2008年1月
The Coca-Cola Company SVP
2014年1月
The Coca-Cola Company President/Sparkling Brands & Strategic Marketing
2016年1月
DDB Worldwide North America CEO
2018年2月
DDB Worldwide CEO
2020年9月
Dentsu Aegis Network Ltd. (現 Dentsu International Limited)CEO
2020年9月
当社執行役員
2020年10月
Dentsu International Limited Global CEO(現任)
2021年3月
当社取締役執行役員(現任)

取締役 松井 巖

略歴

1980年4月
最高裁判所司法研修所 修了
2007年10月
大津地方検察庁検事正
2009年7月
名古屋高等検察庁次席検事
2010年10月
大阪高等検察庁次席検事
2012年6月
最高検察庁刑事部長
2014年1月
横浜地方検察庁検事正
2015年1月
福岡高等検察庁検事長
2016年9月
検察官を退官
2016年11月
日本弁護士連合会弁護士登録(東京弁護士会所属)八重洲総合法律事務所(現任)
2017年2月
株式会社電通 労働環境改革に関する独立監督委員会委員長
2017年6月
株式会社オリエントコーポレーション社外監査役( 現任)
2018年6月
グローブライド株式会社社外取締役(監査等委員)(現任)
2018年6月
東鉄工業株式会社 社外監査役(現任)
2018年6月
長瀬産業株式会社 社外監査役(現任)
2020年3月
当社社外取締役(現任)

取締役・監査等委員 大越 いづみ

略歴

1989年10月
株式会社社会工学研究所入社
1995年5月
ワーナーランバート株式会社入社
1998年1月
当社入社
2014年4月
当社ビジネス・クリエーション局上級特別職
2016年7月
当社ビジネス・クリエーションセンター ECD
2017年10月
当社ビジネスD&A局 EBD
2018年1月
当社電通イノベーションイニシアティブ EBD
2019年5月
当社データ・テクノロジーセンター EPD
2020年3月
当社取締役(監査等委員)(現任)

取締役・監査等委員 長谷川 俊明

略歴

1977年4月
弁護士登録(第一東京弁護士会)
1982年1月
大橋・松枝・長谷川法律事務所パートナー
1990年1月
長谷川俊明法律事務所代表(現任)
2011年6月
当社社外監査役
2016年3月
当社社外取締役(監査等委員)(現任)

取締役・監査等委員 古賀 健太郎

略歴

1985年4月
株式会社三菱総合研究所入社
1993年5月
コロンビア大学経営研究科修士課程修了
1999年6月
ハーバード大学経営管理研究科博士課程修了、経営管理学博士号取得
2001年4月
早稲田大学商学部助教授
2002年1月
イリノイ大学会計学科助教授
2009年7月
国立大学法人一橋大学大学院国際企業戦略 研究科准教授
2012年6月
当社社外監査役
2013年6月
株式会社りそな銀行社外監査役
2016年3月
当社社外取締役(監査等委員)(現任)
2018年4月
国立大学法人一橋大学大学院経営管理 研究科准教授(現任)

取締役・監査等委員 勝 悦子

略歴

1978年4月
株式会社東京銀行(現 株式会社三菱UFJ銀行)入行
1992年1月
株式会社日本総合研究所調査部
1995年4月
茨城大学人文学部社会科学科助教授
1998年4月
学校法人明治大学政治経済学部助教授
2001年1月
財務省関税・外国為替等審議会委員
2003年4月
学校法人明治大学政治経済学部教授(現任)
2007年1月
厚生労働省労働政策審議会委員
2008年4月
学校法人明治大学副学長(国際連携担当)
2015年3月
文部科学省科学技術・学術審議会委員(現任)
2016年6月
株式会社商船三井 社外取締役(現任)
2019年3月
当社社外取締役(監査等委員)(現任)

取締役・監査等委員 サイモン・ラフィン

略歴

1990年11月
Safeway plc CFO & Property Director
2009年1月
Mitchells & Butlers Non Executive Director
2009年3月
Hozelock Group Chairman
2009年8月
Aegis Group plc Non Executive Director
2011年8月
Assura plc Chairman
2013年11月
Flyve Group plc Chairman
2014年4月
Dentsu Aegis Network Ltd.(現 Dentsu International Limited)監査委員会議長(現任)
2016年3月
Watkin Jones Group Non ExecutiveDirector(現任)
2020年3月
当社社外取締役(監査等委員)(現任)

ガバナンスの実効性向上に向けた取り組み

取締役会の実効性に関する分析・評価

当社は、取締役会の実効性を継続的に高めるために、取締役会による経営の監督の実効性および適正性について、取締役全員による取締役会の実効性評価を行い、第三者機関による分析および評価を実施しています。取締役会は、その結果について取締役会事務局から報告を受けた上で、取締役会全体の実効性について分析・評価ならびに課題の改善を行うことにより、取締役会の実効性の維持、向上を図っています。

2020年度実効性評価方法の変更

2019年度まではアンケート方式による実効性評価を実施していましたが、2020年度は純粋持株会社への移行や取締役会におけるダイバーシティ推進等、取締役会に変化があった年であったことに加え、中期経営計画の発表等を踏まえ、より中長期な視点での課題の抽出を目的として、取締役全員に対する第三者機関によるインタビュー方式を採用しました。

実効性評価の内容

2020年度のアンケートおよびインタビューにおける主な質問テーマ

アンケートの項目(6項目32問)

  • 戦略的アライメントとエンゲージメント(9問)
    (経営戦略、資本政策、事業ポートフォリオの見直し、ESG対応、事業リスク、株主との対話等)
  • 取締役会の構成・体制(サクセッションプラン、スキルセット等)(3問)
  • 取締役会のプロセスと実務(取締役会運営、審議テーマ、トレーニング等)(8問)
  • 経営監督機能(リスク管理、グローバルガバナンス体制、上場子会社のガバナンス体制)(8問)
  • 取締役会の文化とダイナミクス(2問) 6. 監督機能(監査等委員のみ対象)(2問)
2020年度の評価ステップ
2020年度の評価ステップ

2019年度の課題と進捗

2019年度の分析・評価において課題として抽出された「グループ会社の管理監督」については、純粋持株会社へと移行したことにより評価が改善しました。「戦略の審議に必要な情報提供」については、オンラインポータル等の活用等、情報提供を充実させたことにより評価が改善しました。しかしながら、「CEOの後継者育成計画」や「戦略の審議に必要な情報提供」においては、更なる改善の余地があるとして、引き続き課題として抽出されました。

今後の課題および改善に向けた取り組み

当社は、2020年1月より、純粋持株会社への移行および取締役会のダイバーシティの推進を行うなど、これまでのガバナンス体制の大幅変更に着手した結果、下記(1)~(3)の新たな課題も浮かび上がりました。当社は、これらの課題への施策を通じて、取締役会の実効性を更に向上させ、コーポレートガバナンスの一層の強化に努めます。

  • 長期ビジョン・経営戦略およびそれを支えるガバナンス体制のたゆまぬ改善の推進
    長期ビジョン・経営戦略は、当社の置かれている環境の変化や各種企業価値向上策の実行に伴い、適時適切な見直しが行われるべきであり、またそれらの達成を支えるためにふさわしい組織形態やガバナンス体制を柔軟に見直すことも躊躇すべきではないと考えます。重要なことは、最新の長期ビジョン・経営戦略を取締役会メンバー全員が共有し、適切なガバナンス体制の下、スピード感をもって施策が実行されることであり、たゆまぬ改善を推進していきます。
  • ESGに関する議論の充実化と取締役会としての共通認識の構築
    ESGは企業価値向上に向けた重要なテーマであるとの認識の下、取締役会において、グループ全体のサステナビリティ戦略についての議論を深化させるとともに、その後の取り組みについても監督機能を果たす体制を確立します。
  • 取締役会における重要議論の活発化/取締役会のコミュニケーションの深化
    年間スケジュール等についての検討を行い、取締役会における審議テーマを設定してスケジュールを確定させることにより、重要なテーマについて取締役会での議論の深化を図ります。併せて、社外取締役を含む取締役間のコミュニケーションを円滑にするための施策も実施していきます。

取締役に対するトレーニング

役割・責務を適切に果たせるよう、執行役員および取締役に対する職務執行上不可欠な知識の習得と継続的な研鑽機会の提供を行っています。

トレーニングの具体例

対象とする役員 就任時 就任後
取締役・執行役員
  • 当社の経営・事業・財務等の戦略や関連する重要事項や法令等についての研修
  • 当社グループの課題の特定と解決策に関するディスカッション
  • 定期的に役員勉強会を実施し、メガトレンドにおける課題に対するベストプラクティス等の最新の情報を得る機会を設定
社外取締役
  • 当社グループの事業内容、組織体制等の説明
  • 定期的に事業課題等について情報提供

取締役会の透明性向上に向けた取り組み

役員報酬制度

  • 役員報酬の決定に関する方針の概要
    当社は、役員報酬と当社グループの業績および企業価値との連動性を明確にし、株主をはじめとするステークホルダーの皆様との利害共有を促進することで、当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上に貢献する当社の役員の意識を高めることを目的として、役員の報酬を以下の方針に基づいて決定しています。
    • グローバルに競争力のある報酬体系と報酬水準とする。
    • 報酬体系は、経営の成果・結果に基づく報酬体系とする。
      固定報酬と変動報酬(年次賞与(金銭報酬)および業績連動型株式報酬(中長期賞与))のバランスを適切に図る。
    • 報酬水準は、地域(リージョン)の報酬水準に基づき決定する。
  • 変動報酬の指標
    株主をはじめとするステークホルダーと当社取締役および執行役員との利害を更に共有することを目的として、2021年度以降の変動報酬を決定する指標については、2020年度以前のものから次の通り変更しました。変動報酬を決定する指標の基準値については、マクロ・ミクロの経済環境および当社の経営環境を踏まえ、各事業年度に適切に設定します。

報酬の割合(2021年度変更)

固定報酬:執行役員報酬としての基本年俸(
変動報酬:年次賞与()、業績連動型株式報酬(中長期賞与)(

各変動報酬に係る指標が基準値を達成した場合

固定報酬:60% 変動報酬:40%

各変動報酬に係る指標が下限値を下回った場合

固定報酬:100% 変動報酬:0%

各変動報酬に係る指標が上限値を上回った場合

固定報酬:40% 変動報酬:60%

  • 1 変動報酬の割合は、基本年俸を100%とした場合の割合を示します。
  • 2 外国人取締役については、原則としてその者が役員を兼務している海外子会社から主たる報酬を支給しているため、上記の対象外としています。

変動報酬の指標

●年次賞与の指標

2020年度以前:当社グループ連結営業利益(国際財務報告基準に基づく)

2021年度以降:支給対象となる役員の担当職務に応じ、当社グループの連結調整後営業利益または当社国内事業の連結調整後営業利益(国際財務報告基準に基づく)理由:恒常的な事業の業績を測る利益指標であり、1年間の経営成績を評価する指標として、より適切であると判断したため。

●業績連動型株式報酬(中長期賞与)

2020年度以前:3事業年度における当社グループ連結売上総利益オーガニック成長率単純平均値

2021年度以降:株主総利回り(TSR)および当社グループの連結調整後営業利益の組み合わせ

指標 基準値 構成割合1
株主総利回り(TSR) 東証株価指数(TOPIX) 30%
ピアグループ2における株主総利回り(TSR)の平均値 20%
当社グループ連結調整後営業利益 年平均成長率(CAGR) 50%
  • 1 各指標の数値がいずれも基準値であった場合に業績連動型株式報酬(中長期賞与)を構成する金額の構成割合です。
  • 2 当社グループの競合会社として、WPP plc、Omnicom Group Inc.、Publics Groupe S.A.、INTERPUBLIC GROUP OF COMPANIES, INC.、Accenture PLCおよび株式会社博報堂DYホールディングスの6社をピアグループとして選出しています。

理由:株主をはじめとするステークホルダーと目線を合わせる指標としては、株主総利回り(TSR)を採用することが適切であり、また、経営成績を評価する指標としては、恒常的な事業の業績を測る利益指標である当社グループの連結調整後営業利益を採用することが適切であると判断したため。

各報酬項目の対象役員

  固定報酬 変動報酬
金銭報酬 株式報酬
基本年俸 年次賞与 業績連動型
株式報酬
(中長期賞与)
監査等委員でない社内取締役 1 2 2
監査等委員でない社外取締役 × ×
監査等委員である社内取締役 × ×
監査等委員である社外取締役 × ×
  • 1 執行役員報酬としての基本年俸は執行役員を兼務する者に限ります。
  • 2 監査等委員でない社内取締役のうち執行役員を兼務する者に限ります。

政策保有株式の保有方針

当社は、純投資以外に、取引先等との事業上の関係を維持・強化することにより、中長期的な企業価値の向上を図ることを目的として、当社取引先である上場会社の株式を保有することがあります。

これらの政策保有株式については、取得価額に対する当社の目標資本コストに比べて配当金・関連利益などの関連収益が上回っているか、株式の保有が投資先との取引関係の維持・強化や共同事業の推進に寄与するか等の観点から、保有する意義が乏しいと判断される株式については、売却を進める等縮減を図ることを基本方針とします。かかる基本方針に基づき、毎年取締役会において、保有する政策保有株式の全銘柄を対象として、個別銘柄毎に、中長期的な視点に立って、保有目的、経済合理性等を精査し、保有の適否を検証するとともに、その内容についてコーポレートガバナンス報告書等において開示します。

リスク管理

リスク管理体制

電通グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を下に記載しています。電通グループでは、コーポレートガバナンス体制(2021年7月1日現在)の下、経営目標の達成を阻害する将来の不確実な要因としてのリスクを最小化するとともに、これらを機会として活かすための様々な対応を行っています。

重要なリスクの管理プロセス

2020年は内部統制・リスク委員会を3回開催し、ERM(Enterprise Risk Management: 全社的リスクマネジメント)のアプローチを基軸に、グループ経営上重要なリスクを識別・評価し、そのリスクの顕在化の予防および顕在化した場合の影響の最小化のため、リスク・スポンサーを選定しました。リスク対応計画の策定と実施を委任し、その対応状況のモニタリングを定期的に行いました。

また、電通ジャパンネットワーク(以下、DJN)に内部統制・リスク委員会、電通インターナショナル(以下、DI)にリスク委員会を設置し、同様のリスク管理活動を行っています。2020年は、DJNでは6回、DIでは4回の委員会を開催しました。

なお、2021年より、グループレベルのリスク管理については、グループ経営会議で全社的な立場からリスクの評価や対応の議論を行うこととし、その下部組織としてグループリスク会議を新設しました。

投資家の判断に影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスク項目とその対応策

主なリスク項目 対応策
(1)景気変動ならびにコロナ禍が加速する社会的変革に伴うリスク 事業環境の変化に速やかに対応し、新たな事業機会を的確に捉えるための事業変革を企図した「中期経営計画─構造改革と事業変革による持続的な成長の実現─」を策定
(2)中長期の視点での新たなビジネス開発に伴うリスク 「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」事業と位置付けた、顧客企業の事業変革を支援する領域の強化による成長戦略の実践を上記中期経営計画の骨子の一つとし、同領域の売上総利益構成比を今後50%に高めることを目標として、その進捗を定期的にモニタリング
(3)人財に係るリスク 長期的に目指す方向性として「an invitation to the never before.」というタグラインと8つの行動指針「THE 8 WAYS」からなる新しいビジョン&バリューを掲げ、世界中の電通グループ内の企業・従業員、更には外部パートナーとの価値創造に向けたチーミングを推進・加速
(4)事業の構造改革に係るリスク 事業・競争環境の急速な変化に対応するための新たな構造改革を、DJNとDIにおいて実施
(5)既存の広告業界の競争環境と構造変化に起因するリスク
 
①広告業界競合社との価格競争のリスク 顧客企業に生活者インサイトと統合されたソリューションによる高付加価値を提供することで競合社との差別化を図り、また強固な顧客との関係性を維持することで過度の価格競争を回避
②グローバル企業の扱い喪失リスク 同上
③メディア環境の構造変化に伴うリスク メディア環境の構造変化を商機と捉え、次世代のメディアにグループのリソースを柔軟に配分・投下し、常に最新の生活者の行動原理に合わせたマーケティングソリューションを顧客企業に提供
④他業種との競争の拡大 業界構造の変化を商機と捉え、広告マーケティングで培ったノウハウと、データとテクノロジーを融合して進化させ、コンシューマー・インテリジェンスを活用した統合ソリュ―ションを提供するモデル確立を企図
⑤海外におけるインハウス化の潮流 この潮流に対応したコンサルティング機能を強化
(6)コンテンツ事業に係るリスク 多くのコンテンツ事業案件をポートフォリオとして管理し、コンテンツ事業のリスクを分散
(7)DI社に係るのれんおよび無形資産の減損リスク
2020年は、資金生成単位グループ毎の減損テストを四半期ごとに実施
(8)情報セキュリティ・サイバーセキュリティに係るリスク DJNとDIにおいて、サイバーセキュリティ専任部署を設け、安全性の確保と新しい脅威に対する対応を実施
(9)法規制・訴訟等に係るリスク  
①労働法規に違反するリスク 従業員一人ひとりが恒常的に良好なコンディションを維持できる労働環境を整えることを経営の最優先課題の一つとして取り組む
②個人情報等に係るリスク 国内・海外を問わず、個人情報保護法およびEU一般データ保護規則等の法令または諸規制を遵守し、また、これら法令・諸規制の改定に迅速に対応
(10)災害、事故等に係るリスク 地域・市場毎に想定される災害や事故等に関わる問題に対し、DJNならびにDIのリスク委員会において、クライシス・マネジメントや事業継続計画(BCP)を定期的に検討

コンプライアンス推進体制進

コンプライアンス推進体制

(株)電通グループでは、企業グループ活動の指針として「電通グループ行動憲章」を定めています。憲章の重要な柱として「コンプライアンス」体制を位置付けており、取締役、執行役員および従業員が適切に業務を遂行できるよう、規則、マニュアル、研修等の整備を行っています。

事業を適切に推進するため、国内事業(電通ジャパンネットワーク、以下DJN)では「DJNコンプライアンス委員会」を設置し、海外事業(電通インターナショナル、以下DI)では「DIコンプライアンス委員会」を設置しています。そして(株)電通グループには、両委員会を統括するため「グループコンプライアンス会議」を設置し、両委員会からコンプライアンスに関する報告を受けるとともに、グローバルな視点で取り組むべきコンプライアンス事項についての意思決定を行います。

こうした環境を整備の上、PDCAサイクルにてコンプライアンスの維持・向上を図っています。

DJNのコンプライアンス推進体制

コンプライアンス・プログラムの実施

業務遂行に関するコンプライアンスでは、広告業務に関わる重要な法令順守のための各種施策の実施(広告活動に関する法規制全体を網羅した冊子の配布、WEBによる自主学習の実施等)、情報セキュリティ・人権・ハラスメント・経理手続き等業務全般において法令および社の規程を順守するための施策の実施、問題発生時の通報制度や相談制度の設置等、様々な施策を実施しています。

モニタリングの実施

DJN各社のコンプライアンスにおける対応状況については、定期的にDJNコンプライアンス委員会で報告を受ける体制を整備しています。

内部監査という観点では、DJN内部監査オフィスが内部監査計画に従い、法令遵守状況のモニタリングを実施しています。

問題発生時の対応

DJN各社の全役職員は、コンプライアンス上の問題あるいはその懸念を察知した場合、当該問題に関する事項を正確かつ迅速に所属長、あるいは規則で定められた機関に報告します。

所属長は、直ちに自社のコンプライアンス担当者に報告し、担当者はDJNコンプライアンス委員会事務局に連絡します。

DJNコンプライアンス委員会は、同事務局から受けた報告の内容に関し、当該会社に調査についての指示を行うとともに、DJN各社が自発的に調査を行うことを妨げません。

コンプライアンス上の問題が確認された場合は、当該各社において、速やかに是正措置を講じます。

内部通報制度「コンプライアンスライン」

DJNは、コンプライアンス違反行為の早期発見・解決、そしてこれらによるコンプライアンス経営推進と会社の健全な発展を目的とし、電通グループ内部通報制度「コンプライアンスライン」を設置しています。

「コンプライアンスライン」は「『コンプライアンスライン』運用ガイドライン」に従って運用されており、全役職員が利用することができます。

DIのコンプライアンス推進体制

コンプライアンス・プログラムの実施

重要な法令順守のための各種コンプライアンス規程およびこれらのサマリーを整備し、各国言語に翻訳の上、全役職員に周知しています。

また、経営陣からコンプライアンスに関するメッセージを従業員に定期的に発信することで従業員の意識向上に努めるとともに、定期的なトレーニングを実施することによって、コンプライアンスに関する知識のアップデートや注意喚起を促しています。

モニタリングの実施

各種トレーニングの受講率の把握、またコンプライアンスに関する質問への回答を毎年経営幹部から回収するなどの施策を通じ、コンプライアンスプログラムの浸透を定期的にモニタリングしており、継続的なプログラムの改善に役立てています。

贈収賄防止への取り組み

関連規程の整備やトレーニングの実施等により、贈収賄の防止に向けた取り組みを徹底しています。

また、一定金額を超える贈答品等については、所属長への事前報告と事前承認を要する制度を設置するとともに、当該報告・承認内容を専門部署で集約することにより、適切なモニタリングと牽制機能が働くよう設計しています。

内部通報制度「Speak Up!」

グループ会社の全役職員が利用できる内部通報プログラム「Speak Up!」制度を整備し、社内窓口とともに社外の独立専門業者を通報窓口として設置しています。

この制度においては、通報者の所属・氏名について秘密保持を徹底し、通報者が通報を理由に人事処遇上の不利益を被ることのないよう社内規定で定め、有効に機能するよう設計しています。

電通グループ行動憲章(抜粋)

電通グループは、世の中の幸福に貢献する企業グループであり続けます。私たち一人一人が起点となり、正しい行動をとることで、それを実現することができます。これが、電通グループに属するすべての人が、この行動憲章を理解し、実践することが求められる理由です。

行動憲章は、電通グループのすべての人に適用されます。行動憲章は、電通グループの一員としてとるべき行動と守るべき原則を規定しています。行動憲章は、電通グループ内の行動指針を示すとともに、すべての取引先、株主、地域社会などのステークホルダーに対する行動指針を示しています。

全文はWEBサイトをご覧ください。
https://www.group.dentsu.com/jp/about-us/governance/codeofconduct.html

クリエーティブ力を活かした、
電通グループのコンプライアンスマニュアル

コンプライアンス関連のマニュアルには、内容が難しく、理解しにくいものが多く見られます。電通グループでは、従業員へのコンプライアンス啓発活動において理解促進ができるよう、クリエーティブ力を発揮し、コンテンツを充実させたマニュアル制作と配布を行っています。

くわしくはコーポレートガバナンス報告書をご覧ください。