ESG

持続可能性:電通グループと社会

「顧客、パートナー、従業員、そしてすべての生活者の成長に寄与することによって
より良い社会を実現することが電通グループの存在意義です。」

代表取締役社長執行役員

山本 敏博

持続可能性:電通グループと社会

現在、世界は持続可能な社会に向け、気候変動対策、生物多様性保全、平等の推進等の大きな課題に直面しています。また、コロナ禍で世界経済システムの脆弱性が明らかになり、世界のボーダーレス化が再確認されました。そして、社会における企業の役割、貢献、影響に対し、投資家や政府、人々が益々厳しい目を向けるようになり、企業自らの行動や企業が提供する商品・サービスを通した社会的価値の提供を求めるようになりました。

今後、企業は従業員の士気を高め、持続可能な事業を構築するために、長期的な社会的価値創造とパーパス、戦略、行動との整合性を取ることが不可欠となります。

電通グループも例外ではありません。私たちは、120年の歴史の中で企業、社会、そして生活者を結ぶ懸け橋となって顧客企業のビジネスモデル変革を推進し、また生活者に関する知見を培ってきました。今後も、社会的価値創造を核としたサービス提供を通して顧客企業の事業成長をサポートすると同時に、私たち自身も次の100年につながる持続可能な事業成長を目指していきます。

電通グループは中期経営計画で4つの柱を掲げており、その1つが「ソーシャルインパクトとESG(環境、社会、ガバナンス)」です。

この度、電通グループは経営トップが推進する新たな会議体「サステナブル・ビジネス・ボード(以下SBB)」を電通インターナショナル社のグローバルCEOウェンディ・クラークを議長として発足しました。

SBBは、電通グループと社会のいずれにとっても高い価値を提供することをミッションに掲げ、電通グループの成長戦略、企業文化、そして事業運営の中心に持続可能性を構築することに注力していきます。具体的には、電通グループの企業文化、知見、また顧客企業とパートナーをつなぐグローバルなエコシステムを活用して付加価値が提供できる「持続可能な世界」「公平で開かれた社会」「デジタル社会の価値向上」の3つの優先事項にフォーカスした「2030サステナビリティ戦略」を遂行していきます。

私たちは変革を生き抜くための持続可能なビジネスソリューションを顧客企業に提供し、顧客企業の事業変革をサポートしていきます。

「2030サステナビリティ戦略」遂行にあたっては、電通グループにおいても持続可能性を核とした企業文化の醸成が不可欠です。SBBは電通グループの全従業員約64,000名に対し、私たちが担う重要な社会的役割の理解を促していきます。また「持続可能性」は業務遂行のためだけではなく、グループの社会的目的「未来のすべての人々のために、真に持続可能な価値を創造する」を達成するためにも重要であるということへの理解も促していきます。

私たちの優先事項

今年1月、電通グループは社会と環境に大きく貢献するための3つの優先事項に基づいた「2030サステナビリティ戦略」を策定しました。

持続可能な世界

従来通りの企業経営はもはや通用せず、企業は最高水準の環境目標を達成することが求められる時代になりました。電通グループは低炭素化を加速し、2030年までにネットゼロエミッションを実現して気候変動への影響を低減していきます。

私たちのビジネスとバリューチェーンにおける抜本的な脱炭素化は、最初のステップにすぎません。生活者に関する知見を培った私たちにできる最大の貢献は、人々の環境に対する意識や行動の変革を促す力にあると考えています。私たちはその力を発揮し、人々がより環境に配慮して、持続可能なライフスタイルを送れるようになることを目指します。そして、今後10年で10億人の人々が、より持続可能な消費ができるようサポートしていきます。

公平で開かれた社会

機会と平等は、誰もが有する基本的な権利であるにも関わらず、いまだに世界中で不平等が存在しています。

電通グループは多様性を尊重しており、私たちの強みは多様性にあると考えています。私たちは、誰もが自分らしさを存分に発揮して働けるインクルーシブな企業文化を醸成し、特別な支援が必要な人々にも等しく機会を提供します。また、パートナー企業にも同様の行動を求めていきます。

2021年より、私たちはジェンダーバランスの理解、野心的な目標設定、女性活躍推進のための明確なキャリアパスの設定、の3つを中心とした教育プログラム「Inspiring Inclusion」をグループで展開しています。

公正で平等に教育や医療、雇用、法的支援を受ける機会について、社会における意識・行動変革を推進することも私たちが担う役割だと考えています。人々に現代社会が直面している現実に目を向け、当事者意識を持った意識・行動変革を促し、不平等の壁をなくしていきます。

私たちが南アフリカで行った「16 Days of Light」キャンペーンは、多くの女性殺害現場となっていた、同国で最も暗い街角に明かりを灯し、性別を理由とした暴力を当然視する風潮に一石を投じた取り組みです。私たちが多くの人々にこのキャンペーンへのサポートを呼びかけ、また多くの女性に助けを求めるよう促した結果、実に4,000万人以上に広がるキャンペーンとなりました。私たちは、同様の固定観念や既成概念を打ち砕くキャンペーンを2030年までに延べ10億人に向けて展開したいと考えています。

デジタル社会の価値向上

デジタルインクルージョンは誰もが有する基本的な権利です。私たちは、人々に自分の個人情報を管理するスキルとツールを提供することによって信頼を醸成し、健全なデジタルの使用につなげようと考えています。

電通グループが行った「Consumer Vision」調査では、調査対象者である生活者の70%が、2030年までに今より自分の個人情報管理ができなくなると考えており、また世界の約25%の人々が、いかなる状況下でも個人情報の開示に否定的であることが分かっています。

私たちはデジタル格差を解消し、社会をより良くするためにデジタルが使われるよう注力していきます。今後10年で、変化し続けるデジタル環境への人々の深い理解を促し、より良い未来への変化を牽引し、インクルージョンのみならず健全なデジタルの使用が定着することを目指します。

具体的には個人情報に関する啓発活動を行い、私たちのバリューチェーン全体のデータに関する倫理的な方針や取り組みを紹介して、10万人の若い世代に健全にデジタルを使いこなすスキルやツールを提供していきます。更に様々なステークホルダーとの協働を通して業界の透明性やバランス、誠実さを高め、デジタルが担うポジティブな役割を最大化していきます。

TOPIC

「持続可能な開発のための世界経済人会議
(以下、WBCSD)」へ参画

非常に複雑かつ密接につながっている世界で持続可能な変化を起こすのは容易ではありません。そして複数の課題が絡み合っているため、喫緊の課題に対応するには一歩ずつ前進するのでは遅すぎます。

WBCSDは、約200社のメンバー企業のCEOが主導し、持続可能な世界への移行を加速化するために協働する組織です。参画企業は幅広い業界・地域にまたがり、その売上は合計8.5兆米ドルに達します。

2021年、電通グループはWBCSDに参画しました。WBCSDのビジョンは、「2050年までに、地球の90億人以上のすべての人々が幸福に暮らせる世界を実現する」です。
WBCSDのサイト:https://www.wbcsd.org/

2020年のハイライト

気候変動対策

私たちは、2020年に2015年対比でスコープ1と2のCO2排出量を合計56.9%削減(2019年対比では合計20.6%削減)、海外事業においては再生可能エネルギーに100%切り替えるなど(但し、RE100基準において)、最高水準の環境目標を当初計画より前倒しで達成しました。また、スコープ3の排出量は23,066トンとなりました。

7月には電通インターナショナル社が「Business Ambition for 1.5℃」に署名し、SBTイニシアチブによる新基準「1.5℃目標」に基づいた2030年までのネットゼロエミッション達成への賛同を表明しました。

私たちは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しており、現在グループ全体で同フレームワークに則した情報開示の準備を進めています。

環境関連のデータについては、ESGデータサマリーをご参照ください。

RE100に準拠するためには、エネルギーを使用する国内でエネルギーを購入することが求められます。しかしながら、電通インターナショナル社の電力需要の9.7%を占める9つの市場(ロシア、台湾、シンガポール、ニュージーランド、香港、ケニア、スリランカ、ガーナ、アルゼンチン)においては、電通インターナショナル社が管理できない要因により、国内で再生可能エネルギーを調達することができませんでした。そのため、可能な限り隣接する国で再生可能エネルギー証書(REC)を購入し、RE100が暫定的な手段として認める方策を採用しています(RE100のガイダンスに沿って、欧州経済地域を単一市場とみなして報告しています)。

多様性のあるインクルーシブな組織構築

2020年、電通インターナショナル社のグローバルCEOにウェンディ・クラークが着任するなど、海外事業でOfficerクラスに就く女性の割合は35%まで上昇しました。管理職に占める女性の割合は、電通ジャパンネットワークで12%、電通グループ全体では14%となります。

電通グループでは、障がい者の活躍推進活動「The Valuable 500」への加盟や国連の「女性のエンパワーメント原則」への署名を行い、また2021年1月に世界経済フォーラムが発足した「Partnering for Racial Justice in Business(ビジネスにおける人種的正義を推進するためのパートナー施策)」に創設メンバーとして参画しました。

平等の推進

2020年4月、私たちはグローバルにおいてソーシャルインパクトプログラムのデジタル化を加速しました。

その1つが、女性起業家100人のサポートを目指して米国からスタートした「Female Foundry」です。同プログラムは、現在8ヶ国(米国、カナダ、チリ、インド、メキシコ、ロシア、シンガポール、南アフリカ)で展開されています。

また、無意識の偏見に気付かせるジェンダー不平等指数の開発などを通して#SeeHerとの協働を継続しています。この指数はオープンソースとして開示され、グローバルな業界基準として広告やプログラミングに活用されています。

私たちはこれからも、国連のSDGs達成に向けてメディアや広告の力を活用していきます。特にSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」に注力しており、世界マラリアデーに、マラリアに苦しむ世界中の人々をつなぐ「Zero Malaria」を発足させました。コロナ禍で2021年のマラリア発生件数が50%増加するとWHOが予測する中、私たちの世代でマラリアに終止符を打つ取り組みは非常に重要です。また、私たちは全米広告主協会に協力し、新型コロナウイルスワクチン接種の重要性啓発にも努めています。

デジタルに対する権利

私たちはGlobal Alliance for Responsible MediaやConscious Advertising Network、Responsible Media Forum等と連携してデジタルメディアにはびこるフェイク情報を削減し、悪意ある有害なコンテンツを根絶する活動を積極的に展開しています。

また、コロナ禍によるロックダウンの中でも若い世代を支援するため、私たちが展開する教育プログラム「The Code」をオンラインで実施し、デジタル社会で成功するために必要なクリエーティブなどのスキルを教えました。このプログラムは、英国と米国を含む9ヶ国で展開しており、2021年にはインドでも展開予定です。受講者は延べ14,000人に達しました。

電通サステナブル・ビジネス・ソリューション(dSBS)

電通グループのデータやクリエーティビティ、人間中心設計(HCD)、そしてデジタルに関する知見は、変革の時代を生き抜く企業や組織のサポートに不可欠だと考えます。

dSBSは、これらの知見と生活者の行動変容に関する深いインサイトを組み合わせ、事業成長と社会貢献両方の成果を達成するという考え方です。私たちは、顧客企業やパートナーとの積極的な協働を通し、dSBSによって新しい持続可能なビジネスモデルへの変革をサポートします。

マテリアリティとビジョン

2020年、私たちは電通グループが直面する主要なリスクと機会について調査を実施しました。

投資家、顧客企業、アクティビスト、世界中にいる300名以上の従業員へのインタビューと、世界経済フォーラムが発行する「グローバルリスク報告書」やWBCSD、Responsible Media Forumの調査結果、そして電通グループの「Digital Society Index」や「Consumer Vision」などのリソースを活用し、5つのメインテーマ「気候変動対策」「持続可能な消費」「多様性とインクルージョン」「平等の推進」「信頼」を抽出しました。「信頼」のテーマでは、特に私たちの業界において、健全なデジタルの使用、コンテンツに対する責任、個人情報のプライバシー保護、そして倫理性が重要となります。

どのステークホルダーからも共通して出された意見は、電通グループは人々の意識・行動変革を起こす力があるというものです。

このインサイトと5つの重要テーマが私たちの新たな戦略とビジョン「新たな生き方に向けて、世界中の人々をインスパイアする」の核となります。私たちは、「持続可能な世界」「公平で開かれた社会」「デジタル社会の価値向上」を通して、この目的を果たしていきます。

「サステナブル・ビジネス・ボード」メンバー

㈱電通グループ 取締役執行役員
電通インターナショナル社
グローバルCEO

ウェンディ・クラーク

㈱電通グループ 取締役執行役員
電通ジャパンネットワーク
社長執行役員CEO
㈱電通 代表取締役社長執行役員

五十嵐 博

電通インターナショナル社
チーフ・サステナビリティ・
オフィサー

アナ・ラングレー

㈱電通グループ
代表取締役社長執行役員

山本 敏博

㈱電通グループ
代表取締役副社長執行役員
電通インターナショナル社
取締役会議長

ティム・アンドレー

㈱電通パブリックリレーションズ
ダイバーシティ&インクルージョン
センター長

大日方 邦子

㈱電通グループ
代表取締役副社長執行役員

桜井 俊

電通Team SDGs

電通ジャパンネットワークではグループ横断で「電通Team SDGs」を組織しており、国内における、「SDGsに関する生活者調査」をはじめ、各種の啓発活動や顧客企業のサポートなどを通じ、持続可能な社会実現に向けた取り組みを推進しています。

第4回「SDGsに関する生活者調査」結果概要
第4回「SDGsに関する生活者調査」結果概要第4回「SDGsに関する生活者調査」結果概要

(2021年1月、全国10~70代の男女計1,400人に調査実施)https://www.dentsu.co.jp/news/release/2021/0426-010367.html

外部機関からの評価

電通グループは、2016年から5年連続で「Dow Jones Sustainability Indices」(DJSI)のアジア・パシフィック版「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・アジア・パシフィック・インデックス(DJSI Asia Pacific)」を構成する銘柄に選定されています。またCDP、EcoVadisなどでも高い評価を得ており、FTSE4Goodなどのインデックスにも組み入れられています。