2016年にはグローバル経済や広告業界、そして電通のビジネスにおいてもさまざまな面で既存体制の動揺が見られ、2017年に向けて予想もしなかった著しい変化がいくつも起きました。
私たちが事業を展開する市場では地政学的な安定が揺らぎ、不透明感が増す中、人々の感情、政治、経済など、あらゆる面で内向き志向が目に付くようになりました。グローバリゼーションは影を潜め、ナショナリズムや保護主義が台頭し、二国間交渉による貿易協定の気運が高まっています。
世界のGDP成長率予測はプラスを保っているものの、私たちが営む活動にも不透明感や不安、異文化間の緊張の影響は目に見える形で現れています。
こうした中でDANはあらゆる機会を捉えて、国境を越え、世界各地のクライアントや消費者に実際に接することができる我々のビジネスの重要性と機会、恩恵を従業員に伝えています。
さまざまな市場や専門知識を背景に持つDAN社員間の結びつきは、素晴らしい力の原動力となります。それは化学反応のように大きなエネルギーと熱意を生み出し、私たちの仕事は「橋」を架けることである、といつも確信させてくれます。
2017年、広告業界は消費者主導型経済という新しい現実に適応しようとしています。それは透明性が高く相互依存的なもので、こうした環境下では閉鎖的で自己中心的な方法、障壁を設けるような方法は機能しません。
競争で優位に立つための決め手は、データに基づくコンバージェンス、アドレッサビリティ 、そしてリアルタイムです。デジタルエコノミーは人工知能(AI)、IoT、ロボット工学、ニューロセンサー技術、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)といった新たなプラットフォームの進展とともに拡大しており、私たちは「破壊」と「架け橋作り」が明確な周期を刻みながら、際限なく繰り返される状況を目の当たりにしています。
破壊が頻繁に起これば、分化・専門化したものを橋渡しする必要性が増します。同様に、世界中の多くの市場で、私たちがそのケーパビリティをオーガニック成長や買収を通じて拡大・深化させるにしたがい、市場間に架け橋を作り、シナジーを高めることが必要となっているのです。
私は電通で11年間仕事をしてきましたが、その間、常に追求してきたのはグローバリゼーションとデジタライゼーションでした。その大きな成果は、グループの事業やデジタル収益の拡大、海外事業構成比の上昇から見てとることができます。2013 年にイージス・グループを買収しDANを発足させてからは、オーガニック成長、売上成長、そしてオペレーティング・マージンのいずれにおいても市場や競合グループの平均を上回ってきました。
DANの成長は、戦略的買収によって加速を続けています。2016年のM&Aは45社、予想総額は26億ポンドで業界トップとなりました。電通にとって、こうした買収はビジネスを触発し、加速させるものであり、実際そのように機能していると私は考えています。
主要な市場や急成長するセグメントで事業を拡大することができたのは買収の貢献です。さらに、戦略的意図においても、データやCRMの優れたケーパビリティの構築は、買収なしではかなわなかったでしょう。
今後、事業を進めていく中で、あらゆる事業の間にさらに多くの架け橋を作り、相互利益を高めていくこと、特に日本における電通の強みを、グローバルネットワークの最高クラスのケーパビリティと結び付けることは、私たちの責務であるだけでなく、すぐに実行できる機会でもあります。
こうした機会は、シナジーの可能性に満ちた2つの主要分野に存在していると私は考えます。
私たちはソリューション・ネットワークとして、広範な地域のクライアントに、より多くの方法で、彼らのビジネスに深く繋がる価値を提供することを究極の目標としています。なぜなら、クライアントへ多元的な価値を提供できるかどうかが、電通グループが世界になくてはならない進化した企業であることを示す最も重要な指標だからです。
電通にはグローバルマーケターと言える数多くのクライアントがあり、今後彼らは、DAN拠点を有する世界の市場や製品に拡大していく可能性があります。そのため、電通とDANとの間で、新たなクライアントの大きなシナジーを見極め、その実現に精力を傾けなければなりません。
クライアントにとって常に変わらぬエージェンシーに求める最大の価値とは、シェアをめぐってしのぎをけずる市場でクライアントを理解し、協力し、消費者が行動を起こすよう促すことです。従って、私たちの事業の中核は、やはり社員の質、多様性、強み、知識といった人的要素になります。
ここ数年、買収した企業の優れた業績は、多くの点で電通グループの最大の強みとなっています。適切な買収対象を見出し、優秀な人材を惹きつけ、彼らのモチベーションを高く保つことで、買収後のシナジーと成長を促進するという点において、私たちは非常に大きな成功を収めてきました。また重要な人材の買収後の定着率も、業界平均と比べ高い水準を維持しています。これは私たちにとって計り知れないほど大きなメリットであり、働く人々の満足度を示す生きた証拠でもあります。
また、電通が日本で培ってきた業界随一の専門性と、DANのグローバルな経験・プラットフォームを組み合わせることは、今後ますます重要となります。ネットワーク内の人材をさらに定期的に、また流動的に移動させ、活性化させることを目的とした「タレントアジェンダ」は、開始からすでに5年目を迎えました。このアジェンダでは、特に、日本本社と海外のネットワーク間で積極的に交流を促進しています。
クライアントと人材におけるシナジーは、グローバルネットワークの深化につながるだけでなく、株主の皆様に提供できる可能性も大きく開花させます。これは人材とクライアントのシナジーがオーガニック成長の基盤であるからです。電通グループがM&Aにあたり、単なる経費削減ではなく戦略や収益のシナジーを重視してきたのは、私達が株主の皆様に約束した目標を達成し、常に競合グループを上回るための最も重要なドライバーだからです。事実、DANは買収後4年連続で、競合グループ平均の約2倍のオーガニック成長を達成してきました。
イノベーションや新しいデータ、新しい洞察、新しい方法で消費者を動かし、現状を打破すること。そして、クライアント、世界に広がる人材、大切な株主のために、価値への「架け橋」を作ること。これらは、クライアントのためのグローバル・ソリューション・ネットワークであるDANの責務なのです。
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