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日本における労務問題への対応について

「“8つの柱”からなる労働環境改善策」を実施

当社の日本における労働環境については、過去に所轄労働基準監督署から受けた是正勧告を踏まえ、改善へ向け、かねてよりさまざまな対処施策を講じてまいりました。しかしその取り組み途中の2015年12月、前途ある社員(高橋まつりさん・当時24歳)が命を絶つ事態が発生。当社は労働基準法違反で起訴され、2017年10月6日、東京簡易裁判所から罰金50万円の有罪判決が言い渡されました。

こうした一連の事態を、当社は大変重くかつ厳粛に受け止めており、現在、全社を挙げて抜本的な労働環境改革に取り組んでいます。
先のような事態を二度と起こさないためにも、当社は「社員は何よりも大切な財産であり、一人ひとりを見守ることが重要である」と認識を改めました。現在、社員の「労働環境改革」を、経営における優先課題として位置づけています。

「すべての社員が心身ともに健康に働くことができる環境」、そして「多様な価値観、多様な働き方を通じ、社員が自己の成長を実現できる環境」は、当社が今後も持続的な成長を続けていくために欠かせないことです。
また、そうした労働環境を実現することは、当社が社会に対して果たすべき役割であると認識しています。こうした状況を踏まえ、当社は2016年11月、コンプライアンスの徹底と労働環境改革の推進を目的に「電通労働環境改革本部」を新たに設置しました。発足直後から緊急の課題であった「長時間労働の撲滅」と「労務問題の再発防止」への取り組みを開始。「業務量の適正化」、「組織運営の在り方と各種制度の見直し」、「企業文化の再定義」について具体的な改善策を検討しました。
その結果、同年12月に「“8つの柱”からなる労働環境改善策」を策定。以降、この改善策の実行に努めました。

【“8つの柱”からなる労働環境改善策】

(1)コンプライアンス関連の意識・知見の拡充
  1. 労働関連法規・ハラスメント予防に関する研修を、役員・全社員を対象に実施。
  2. 実労働時間削減に向けた三六協定(※)上限の削減・遵守徹底。
  3. 定着度の確認を目的とした定期試験の導入。
(2)全社を対象とした業務平準化・要員再配置
  1. 2017年1月に650名の配置換えを実施。
  2. 緊急に正社員60名の中途採用を実施。
  3. 人材マネジメント担当のマネジメント職(局長補)を全局で任命。
  4. 業務棚卸しの実行とアウトソースに適した業務の抽出。
  5. 協力会社各位と業務フローの見直しについての協議会を設置。
(3)社員のモチベーションの維持・向上

2017年に前年比で減額となった時間外手当は、その全額を賞与として社員に還元。

(4)社員の健康管理・各種ケアの拡充
  1. メンタル相談に常時対応するため、常勤の精神科産業医を配置。
  2. 社員の心身の健康に関して、家族からの相談も受け付ける「ファミリーライン」の設置。
  3. 業務に不慣れな新入社員を対象にした業務相談・キャリア相談・メンタルヘルス相談の体制を拡充。
(5)働き方に関する選択肢の多様化
  1. 出退勤時刻に柔軟性を持たせるフレックス勤務適用部署の拡大(午後10時から翌午前5時は除く)。
  2. 社員間コミュニケーション活性化のためのオープンな執務スペースへの改装を、計画より前倒しで実施。
  3. モバイルワーク推進に向けた対応インフラの早期導入。
  4. 育児・介護に従事している社員を対象に、2017年から「在宅勤務制度」の部分・試験導入の開始。
(6)労働管理の改善・徹底
  1. 私事在館は今後も原則禁止。
  2. 複数月連続で三六協定上限付近の勤務を行っている社員に対する個別実態調査の実施。
  3. 原則午後10時から翌5時の全館消灯と同時間帯における持ち帰り残業禁止の継続。
  4. 業務に不慣れな新入社員を対象にした特別条項の申請不可の継続。法令以上の配慮を行い、業務負荷を軽減。
  5. 休暇の積極取得のため、全社員に上期5日、下期5日の有給休暇を推奨。
(7)マネジメントの拡充に向けた評価制度の全面改定
  1. ラインマネジメント職への「360度評価」を導入し、ラインマネジメント職の適性検査を実施。
  2. マネジメント職の評価機会を中期的な目標達成を重視し、年1回に改定。
  3. 部下の育成や適正な業務量管理を評価視点としてより重視。
(8)社員の自律的成長支援
  1. 非マネジメント職の評価軸に、成長やキャリア開発に関する中期的な目標を設定。
  2. 業務と人材のミスマッチを解消する施策として「社内FA公募制度」を実施。
  3. 社員が広く知見・経験を獲得する一助として、5年に1度取得できる「一定期間のサバティカル休暇」を新設。
  4. 社員の自己研鑽支援として、1人当たり年間5万円を上限に教育訓練講座受講費用を社が負担。

(※)三六協定:労働基準法第36条に基づき、時間外労働等について労使間で結ぶ協定のこと。労働基準法第36条により、会社が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働および休日勤務などを命じる場合、労働組合などと書面による協定(三六協定)を結び、労働基準監督署に届ける義務を負う。

労働環境改革を確実に遂行するための組織改革

労働環境改革を全社的に推し進めるため、さまざまな組織改革も行いました。
2016年12月からは、各局に人材マネジメントを担当するマネジメント職(HRM担当局長補)を配置。社員のタイムマネジメントや健康管理、ハラスメントの防止、業務アサインの適正化などを局ごとに進めることで、きめ細やかな対応ができる体制を整えました。

2017年2月には、外部有識者から構成される「独立監督委員会」を設置しました。委員会メンバーには、当社の労働環境改革について助言をもとめるだけでなく、改革の進行を継続してモニタリングしてもらうことで、進捗状況の監督や実効性の検証という役割も担ってもらいます。

また「取締役会」においても、2017年3月の定時総会で新たに選任された社外取締役などが加わり、今後も労働環境改革についての議論を重ねていきます。

一方「労働環境改革本部」では、「“8つの柱”からなる労働改善策」の着実な実行にあたると同時に、新たな施策作りを進めました。今回の改革は、従来の労働環境を抜本的に変えるものでなければなりません。そのためには、長年ビジネスの中で培われてきた事業スタイルや、仕事の進め方にまで踏み込む必要がありました。そこで、仕事の現実的な状況を把握し、社員一人ひとりの声に耳を傾けるために、“透明性”を重視した、さまざまな“対話”を実施しました。その結果、全社員を対象にしたアンケートや、社内意見交換会などを通じて、総計約2万5,000件の意見が寄せられました。
こうした社員の意見や外部有識者や独立監督委員会などへのヒアリングをもとに、2017年7月「労働環境改革基本計画」を策定・発表しました。

中長期的な実行プラン「労働環境改革基本計画」を策定

“新しい電通を創る改革”と位置づけられた「労働環境改革基本計画」は、これから当社が取り組んでいく施策を「約束」「目標」「挑戦」「ゴール」の4つのステージに分け、達成までの具体的な道筋も含めた中長期的なアクションプランとなっています。

労務問題を二度と繰り返さないため、法令遵守・コンプライアンスを徹底するという決意の意味を込めた「約束」では、三六協定違反「ゼロ」、ハラスメント「ゼロ」、過重労働「ゼロ」という“3つのゼロ”の達成を誓うもの。「“8つの柱”からなる労働環境改善策」で明示された「深夜業務原則禁止」の継続や、個人評価指標における「業務効率性」項目の導入、ハラスメントの通報・相談体制の強化など、具体的な取り組みも示しました。

「労働環境改革」の遂行・監督体制

「労働環境改革」の遂行・監督体制

“透明性と対話”を大切にしたヒアリングを実施

透明性と対話
  • オープンな改革推進専用ルームで
  • 議論の内容を徹底して公開
  • 社員との意見交換による改革の推進

経営と社員の積極的な“対話”を実施

総計約25,000件の意見が寄せられた
  • 全社員アンケート(半年間で計3回実施)
  • 社員による提言ディスカッション
  • 各局の人材マネジメント担当者(HRM局長補)とのセッション
  • 社内意見交換会 ➡ 全105回延べ2,125人出席
  • 社員からの提言Box
社内での対話に加え、外部の意見も傾聴
  • 外部有識者ヒアリング
  • 独立監督委員会ヒアリング

一方、「目標」とは、“1人当たりの総労働時間を80%に削減”しつつ“100の成果を目指す”というもの。
それを実現するための労働環境整備と業務改革についても、「正社員採用の拡充推進」「ワークダイエットの推進」などの施策がすでに進行しているほか、「サテライトオフィス、在宅勤務の導入」など今後実施が予定されている施策も数多く含まれています。

この「約束」「目標」までのステージは、改革に必要な環境・基盤の整備にあたるもので、2018年末までの達成を目指し、取り組んでいきます。
「挑戦」と「ゴール」は、さらなる改革の継続・拡大を見据えたもの。「挑戦」では、「目標」で掲げた“総労働時間の80%削減”を達成した後、生み出した20%の時間を心身の向上や日々の充実、多様な体験・学習などに充てられるよう、社員の成長を支援するための施策です。「連続休暇日数の大幅拡大」や「介護・育児・社会貢献活動の支援強化」など、新たな制度作りや支援体制の強化を予定しています。

そして最後の「ゴール」とは「“新しい働き方”への転換により、社員と会社の新たな成長を実現し、新しい電通を創る」という、当社が目指す姿を明記しています。
当社は今後も全社一丸となって、この「労働環境改革」を推し進め、1日も早く「ゴール」を実現できるよう努力を重ねてまいります。

労働環境改革基本計画

労働環境改革基本計画

今後の労働環境改革の展開プロセス

今後の労働環境改革の展開プロセス

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