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取締役執行役員 曽我有信

取締役執行役員 曽我有信

国内外で改革と変革を推進し、
持続的な企業価値の向上を図る

2017年度の業績

2017年度は、当社グループが国内外ともに、改革と変革(トランスフォーメーション)に取り組んだ1年となりました。
世界の広告市場では、多くのクライアントが従来のマーケティング活動を全面的に見直し、デジタル化に対応した組織・マーケティングへと移行を進める中、一時的に広告費を抑制するなどの動きも見られました。当社の海外本社である電通イージス・ネットワーク(DAN)が2018年6月に発表した「世界の広告費成長率予測」によると、2017年(暦年)の成長率は全世界で3.3%、地域別では日本が1.6%、Americas(米州)が3.1%、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)が3.2%、APAC(日本を除くアジア太平洋)が4.0%でした。

こうした環境のもとで当社グループは、国内事業においては「労働環境改革と企業基盤整備」を、グループ全体では「ビジネス・トランスフォーメーション」を再優先課題に掲げました。そして、技術革新に伴う環境変化の中で、社会や顧客が真に必要とする価値を当社グループが提供し続けられるよう、自らの事業の変革に取り組みました。具体的には、国内事業では法令順守の徹底と過重労働の撲滅に最優先で取り組むとともに、本改革を将来の持続的な成長につながる企業基盤整備として注力しました。また、DANが担う海外事業においては、「デジタルに関わるビジネスの割合を2020年までに100%にする」との目標に向けた取り組みを加速するとともに、戦略的M&Aの継続によって、デジタル比率のさらなる向上とスケールやケーパビリティの補完、そして企業家精神を持った人材の獲得を進めてきました。

これらの結果、2017年度の連結業績は、売上総利益については主に買収効果(前期比731億円増)および為替影響(同148億円増)により8,776億円(同11.2%増/為替影響排除ベースでは同9.2%増)となりました。一方、調整後営業利益は国内における労働環境改革費用(70億円)もあり、1,639億円(同1.6%減/為替影響排除ベースでは同3.8%減)となりました(図表1、2)。

「労働環境改革」の遂行・監督体制

国内事業の売上総利益は、デジタル領域での成長があったものの、第31回オリンピック競技大会(2016/リオデジャネイロ)など、前年の大型イベントの反動減もあり、ほぼ前期並みの3,619億円(前期比0.4%減/うちオーガニック成長率は0.3%減)となりました。なお、国内事業の調整後営業利益(※1)は、売上総利益のオーガニック成長の伸び悩みと労働環境改革のための費用計上により、国内は888 億円、8.8%減となりました。
海外事業の売上総利益は、積極的なM&A活動や2016年9月に買収を完了したMerkle Group Inc.(マークル社)の貢献もあり、全体では5,160億円(同21.1%増)と引き続き成長しました。なお、為替影響排除ベースの成長率は同17.1%増となっています。一方、2017年における広告市場の減速が影響し、オーガニック成長率は同0.4%増にとどまりました。

地域別の売上総利益成長率は、Americas(米州)が同28.7%増(うちオーガニック成長率は1.5%減)、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)が同22.3%増(うちオーガニック成長率は3.1%増)、APAC(日本を除くアジア太平洋)は同9.0%増(うちオーガニック成長率は0.6%減)となりました。また、海外事業の調整後営業利益は、751 億円(同8.8%増)、為替影響排除ベースでは同3.5%増となりました。
なおデジタル領域構成比は、連結ベースでは43.2%(2016年度は37.3%)、国内事業22.2%(同19.7%)、海外事業57.9%(同52.3%)と、着実に上昇しています。

※1:調整後営業利益…営業利益から、買収に伴う無形資産の償却費、減損損失、固定資産の売却損益、買収に伴う費用等の一時的要因を排除した恒常的な事業の業績を測る利益指標

2018年度の重点施策

2018年度は、国内事業においては引き続き労働環境改革を最優先課題と位置付け、将来の成長に向けた基盤整備を推進します。2017年7月27日に発表した「労働環境改革基本計画」に則り、2017年に着手した「約束の改革に必要な環境・基盤の整備」を2018年末までに完了させるべく、多岐にわたる改善・改革施策に取り組みます。

労働環境改革は、2019年からの「新しい成長フェーズ」、すなわち、本当の意味で効率化された環境の中で、グループの社員一人ひとりがその貴重な時間やエネルギーを最適なミッションに打ち込み、顧客により高い価値のサービスを提供し、社会の革新を実現し、社員も企業も成長する組織体として当社グループが発展していく未来のために必要な準備です。国内事業においては、2018年度に必要充分な費用投下を行い、改革を完遂することで、持続的な企業価値の向上を図ります。

2017年における労働環境改革関連の投資額は、電通単体において70億円でした(内訳は、①300名規模の緊急増員:13億円、②社内業務の棚卸しに伴うIT化・RPA化・ICTの導入など業務効率化やアウトソーシングなどの諸施策と労務管理の徹底:40億円、③オフィス環境の改善:17億円)。2018年には130億円を投入し、労働環境改革を加速する計画です。特に、2017年に効果が実感できたIT化・RPA化・ICTの領域はさらに強化していく予定であり、社内の業務システムや人材マネジメントシステムの大幅な変更も計画しています。投資額の内訳は、業務効率化のための諸施策と労務管理の徹底で80億円、オフィス環境の改善に25億円、増員に25億円を見込んでいます。

海外事業については、過去最高となった2017年の新規ビジネス獲得(※2)のモメンタムを維持しながらも、データに関わるケーパビリティへの投資を継続します。また、長期的な事業成長のために、オペレーションの標準化、迅速な意思決定と事業効率の向上に資する共通のプラットフォームやシェアドサービス確立を企図した投資を行うとともに、スケールやケーパビリティの補完や企業家精神を持った人材獲得のためのM&Aを継続します。
なお、DANが2018年6月に発表した「世界の広告費成長率予測」によると、2018 年(暦年)の成長率は全世界で3.9%を見込んでおり、地域別では日本が1.6%、Americas(米州)が3.8%、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)が3.1%、APAC(日本を除くアジア太平洋)が5.7%です。こうした環境下、海外事業では引き続き、競合を上回るオーガニック成長の実現を目指していきます。

※2:2017年の獲得から喪失を差し引いたネットの新規ビジネス扱いは、メディアで52億ドルという過去最高の金額となりました。

資本政策と配当の考え方

配当について

当社グループは引き続き国内・海外での成長領域への積極的な投資を資本配分の最優先事項として、持続的な利益成長を追求します。経営の安定性、財務の健全性に留意しつつ、企業活動のグローバル化やデジタル化の進展などに対し、事業機会のさらなる創出に向けた投資等を行うことで、当社グループの競争力、収益力の一層の向上と事業成長を実現し、本源的な企業価値の向上を図っていく方針です。

株主の皆様への利益還元は、当社の重要な経営課題です。当社を取り巻く経営環境の変化に応じて、長期的な事業成長による企業価値の最大化、継続的かつ安定的な配当、機動的な自己株式の取得等を組み合わせることにより、総合的な利益還元を図り、ROEの中期的な向上を目指します。(図表3)配当については、安定性を重視しつつ、事業成長のための持続的な投資に必要な内部留保、連結業績動向、財務状況等を総合的に勘案して決定してまいります。2017年度の配当は、これらを総合的に勘案し、1株につき90円(うち、中間配当45円、期末配当45 円)といたしました。

皆様におかれましては、引き続き電通グループの経営に対するご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

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