株主の皆様へ

2014年度を振り返って

株主の皆様におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は当社グループに格別のご理解とご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。

2014年度の日本経済は、政府・日銀の積極的な経済・金融政策を背景に、企業収益の改善、雇用の持ち直しや賃金の上昇などにより、緩やかな回復基調で推移しました。 こうした経済環境の中、2014年(暦年)の「日本の広告費」(当社調べ)は、6兆1,522億円(前年比2.9%増)と3年連続で前年実績を上回るなど緩やかな成長を続け、通年では6年ぶりに6兆円を超えました。

一方、世界経済は、米国が堅調に推移しているものの、新興国における成長率の鈍化や相次ぐ政情不安により、先行き不透明な状況が続きました。そうした中、当社の海外子会社でメディア・コミュニケーション・エージェンシーであるCarat(カラ)が2015年3月に取りまとめた2014年(暦年)の世界の広告費成長率は、前年比4.6%増、地域別ではEMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)が同2.6%増、Americas(米州)が同5.2%増、APAC(日本を除くアジア太平洋)が同6.2%増となっております。

こうした環境の中、当社グループの国内事業においては、消費税率の引き上げの影響はあったものの、2014FIFAワールドカップブラジル大会TMや東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のスポンサーシップ・セールスなどの貢献もあり、売上総利益が前年度比1.7%増加しました。

海外事業においては、新規クライアントの貢献もあり、売上総利益のオーガニック成長率は前年度比10.3%増と二桁の伸びを記録しました。地域別に見てもEMEA(同9.7%増)、Americas (同7.9%増)、APAC(同14.4%増)といずれも前年度を上回りました。

この結果、2014年度の連結業績は収益が7,286億26百万円(前年度比10.4%増)、売上総利益が6,769億25百万円(同10.1%増)、調整後営業利益*1が1,319億37百万円(同5.1%増)、営業利益が1,323億5百万円(同23.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益が798億46百万円(同20.1%増)となりました。

なお、2014年度から従来の日本基準に替えて国際会計基準(IFRS)を適用しております。

*1
調整後営業利益:営業利益から、買収に伴う無形資産の償却費、減損損失、固定資産の売却損益、買収に伴う費用等の一時的要因を排除した恒常的な事業の業績を測る利益指標

中期経営計画「Dentsu 2017 and Beyond」の進捗

Aegis Group plc(以下、「イージス社」)を傘下に加え、新たなステージに入った当社グループは、2013年度に中期経営計画「Dentsu 2017 and Beyond」を策定しています。

「Dentsu 2017 and Beyond」では、「マーケティング・コンバージェンス*2をリードする真のグローバル・ネットワークへの進化」をテーマに掲げておりますが、その取り組みは、4つの経営指標の実績が示すとおり、これまで順調に進んでおり、確かな手ごたえを感じています。

中期経営計画の経営指標 目標と実績

(注)
2013年度、2014年度の会計年度は、4月1日から3月31日までとなります。
なお、2015年度から当社および決算日が12月31日以外の子会社の決算日を12月31日に変更します。
*2
近年のデジタルメディアやソーシャルメディアの普及、消費者の行動様式の変化、各種テクノロジーの進化による、マーケティングの新たなパラダイム
*3
オーガニック成長率:為替やM&Aの影響を除いた内部成長率
*4
デジタル領域:インターネット関連マーケティングサービスおよびITシステムの受託開発・販売等
*5
調整後営業利益オペレーティング・マージン:調整後営業利益÷売上総利益 ×100

中期経営計画「Dentsu 2017 and Beyond」では、ご覧の4つの戦略骨子を定めています。
2014年度の進捗について、戦略骨子に沿ってご説明させていただきます。

中期経営計画の4つの戦略骨子

❶ グローバルでのポートフォリオ多極化

海外事業構成比の拡大

最重要課題である海外事業基盤の拡充については順調に進展しました。2014年度の売上総利益における海外事業構成比は、前年度比4.0ポイント増の50.7%となり、初めて国内事業構成比を上回りました。 2017年度には55%以上の達成を掲げています。 海外事業を構成する3地域であるEMEA、Americas、APACの構成比はそれぞれ20.1%(前年度比1.9ポイント増)、16.5%(同1.3ポイント増)、14.1%(同0.9ポイント増)となっております。

地域別構成比(売上総利益ベース)

One P&L」による海外事業の拡大

海外事業における売上総利益のオーガニック成長率は10.3%となり、前年度に引き続き、海外の競合グループを大きく上回りました。この要因として、当社独自の協調的オペレーティング・モデル「One P&L*6により、各グループ会社が共通の事業目標を掲げシームレスな連携を実現し、競合グループでは困難である統合的なクライアント・サービスを提供できていることが大きいと考えています。また、それにより、クロスセル、アップセルなどを通じて既存クライアントの扱いの領域を増やしている点に加え、新規アカウントを戦略的に獲得できていることも寄与しています。この結果、2014年度も多数の新規アカウントを獲得できました。獲得した新規ビジネスの中には、国内と海外の協業により勝ち取ることができた案件が数多くあります。イージス社との統合では海外における日系クライアントのマーケティング費用獲得を大きな目標にしていましたが、着実にその成果が表れ始めています。これに加え、日本市場での強みを活かしてグローバル・アカウントの獲得にも成功するなど、グループ独自の強みを発揮し始めており、競合グループとも十分互角にわたりあえる力を備えていると考えています。

*6
One P&L」の詳細は、「Dentsu: A Quick Read」をご覧ください

競合他社を大きく上回るオーガニック成長

*7
電通グループ、電通イージス・ネットワークおよびWPPのオーガニック成長率は、売上総利益ベース。他メガグループのオーガニック成長率は収益ベース

❷デジタル領域の進化と拡大

マーケティング・コンバージェンスが進展する中、デジタル領域におけるクライアントのニーズはより高まっています。

2014年度の国内事業におけるデジタル領域の売上総利益は、前年度比12.2%増と二桁成長を続けています。 スマートフォンや運用型広告へのニーズの高まりを背景に、電通単体に加えcci、ネクステッジ電通、DAサーチ&リンクといった主力デジタル子会社の業績が力強く推移しました。

海外事業においては、デジタル領域でのさまざまなM&Aを実施しており、2014年度は11件となりました。 今後も買収などによるケーパビリティの拡充を進めていく考えです。 また、デジタル領域の成長を加速させているのがプログラマティック・バイイングです。 当社グループ海外事業のプログラマティック・トレーディングデスクであるAmnetも、2014年度は売上高が倍増しました。 このような買収と内部成長により、海外事業のデジタル領域構成比*8は前年度から3ポイント増加し43%となりました。

*8
売上総利益ベース

(図)2014年度に実施したデジタル領域のM&A

その結果、当社グループ全体のデジタル領域構成比は、前年度比3ポイント増の30%となりました。 2017年度の目標である35%以上に向け、さらに増やしていきます。

また、こうした取り組みを続ける中で電通単体をはじめとするグループのデジタル・ネットワークのケーパビリティの高さが評価され、2014年度も海外広告賞や業界誌のアワードを多数受賞しました。 こうした実績を当社グループのデジタル・ケーパビリティを世界で認めていただいた証と受け止めると同時に、今後も積極的なM&Aを活用して既存ネットワークの拡充を図り、ケーパビリティとサービス品質の向上に努めます。

(図)デジタル領域構成比

❸ビジネスプロセスの革新と収益性向上

2014年度の国内事業におけるオペレーティング・マージンは23.9%となり、前年度に比べて0.2ポイント改善しました。これは継続的なコスト・コントロールが機能していることによるものです。 国内事業においては、デジタル・ソリューションを含むマーケティング・プロモーション領域などでの売上総利益率改善により、収益性向上が進みつつあります。

海外事業においては、ITおよびファイナンス分野のインフラ強化とシェアード・サービス導入に向けた先行投資を行いました。

こうした一連の投資が費用の大きな上振れもなく当初の予定どおり順調に進んだ結果、当社グループ全体のオペレーティング・マージンは19.5%(前年度比0.9ポイント減)となりました。

今後も国内、海外ともにトップラインの成長を図ると同時に、目標であるオペレーティング・マージン20%以上の恒常的な実現に向け、引き続き業務効率の改善とコスト・コントロールに取り組み、グループ全体の収益性を高めていきます。

(図)オペレーティング・マージン推移

*9
2013年度より、イージス社業績を連結

❹コア・コンピタンスである日本市場でのさらなる事業基盤強化

2014年度の国内事業の売上総利益は、同年4月の消費税率引き上げ後の反動減が懸念される中、その反動を吸収してプラス成長し、前年度の高い伸びにもかかわらず史上最高を達成しました。足元では企業業績の好調や賃金の上昇、雇用改善などを背景に少しずつ個人消費回復の兆しもみえてきました。このような環境の下、新規クライアントからの受注、既存クライアントの新商品やサービスに関するビジネス機会が拡大しています。今後も攻めの姿勢で一層のシェアアップを図ります。

一方、デジタル・テクノロジーの進化と生活者の行動様式の変化により、マーケティング・コンバージェンスは一層加速しています。当社グループはCRM、ビジネス・インテリジェンス、eコマースなど新領域におけるビジネスの一層の拡大を目指し、グループのデジタル・ケーパビリティを結集すべくIsobar、iProspectといった海外デジタル・ブランドと国内事業部門の交流、連携強化を進めています。クライアントの成功を多面的に支援するパートナーに進化するべく、新領域も含めた統合的な課題解決力と収益創出力を高めていく考えです。

また、当社は昨年、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の組織委員会からマーケティング専任代理店として指名されました。組織委員会が国内マーケティング・プログラムから得る収入として1,500億円の目標を掲げています。スポンサーシップ・セールスについては、これまでも順調に進んでおり、今後はスポンサーシップを活用したコミュニケーション展開、いわゆるアクティベーションの活発化が見込まれるため、関連するビジネス・チャンスを最大限取り込むべく力を尽くしてまいります。

(図)国内事業 オーガニック成長

今後の市場展望と2015年度の業績見込み

世界広告市場の成長予測ですが、Caratの試算では、一部地域における地政学的リスクはあるものの、2015年以降も当面、世界全体では堅調な成長が継続すると見込んでいます。また、デジタル広告領域も引き続き高い成長を続ける見通しで、今後ますますその重要性が高まってくるとみています。

今後も中期経営計画で定めた4つの戦略骨子に沿って、持続的な成長実現に向けた事業基盤の拡充を図ります。とりわけ、高い伸びを続けるデジタル領域のケーパビリティ強化を中心とした成長施策が最重要であると考えています。引き続き、世界各地域で市場成長をアウトパフォームするオーガニック成長が残せるよう努めます。また、M&Aによる成長戦略を引き続き積極的に推進していきます。

また、グループの中核である国内事業においては、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のマーケティング専任代理店としての責務を全うするとともに、当社に与えられた新たなビジネス機会を積極的に活かし、収益に結びつけていく考えです。そして、この2020年を契機に、その先の日本全体の成長、日本全体のイノベーションの実現に向け、グループの総力をあげて貢献したいと考えています。

(図)主要広告市場成長率の実績と予測

*出典:
Carat, “Global Advertising Expenditure Forecasts — March 2015”(実績値および予測値は暦年ベース)

2015年度の通期連結業績は収益が6,649億円、売上総利益が6,433億円、調整後営業利益が1,223億円、営業利益が1,000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が635億円となる見込みです。なお、2015年度から当社および決算日が12月31日以外の子会社の決算日を12月31日に変更します。そのため、2015年度は4月1日から12月31日までの9カ月間の変則決算となります*10

*10
2015年12月期は、当社および決算日が12月31日以外の子会社は2015年4月1日から2015年12月31日までの9カ月決算、決算日が12月31日の子会社は従前どおり2015年1月1日から2015年12月31日までの12カ月決算となります

(図)2015年度 連結業績予想

(注)
為替換算レート:2015年度業績予想には2015年1-2月平均レートを、2014年度実績には2014年1-12月平均レートを使用
暦年プロフォーマベースの業績予想については「CFOメッセージ」をご参照ください
*11
当期利益・調整後当期利益:親会社所有者帰属持分

株主の皆様におかれましては、今後とも当社グループの発展にご期待いただくとともに、当社グループへのご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2015年8月
代表取締役 社長執行役員
石井 直

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