電通
統合レポート
2019

電通グループの進化は第2フェーズへ

国内事業を統括する五十嵐博と、海外事業を統括しDANのCEOを務めるティム・アンドレーが、電通グループの事業環境変化と課題、グループの目指す姿と将来展望について語りました。

さらなる進化が求められる背景

五十嵐:2013年の創設から6年、電通イージス・ネットワーク(DAN)の活動からは多くのことを学んでいます。多くの的確なM&Aを継続し、オペレーションを拡大、145以上の国と地域で広く事業を展開していること。100%デジタルエコノミー(デジタルに関わるビジネスの割合を2020年までに100%にする)との目標をいち早く掲げた先進的な取り組みの結果、デジタル領域からの収益が全体の6割を超えていること。Merkle Group Inc.(マークル社)の買収によりデータ・マーケティングのケイパビリティを高め、デジタル領域のサービスを充実させてきたこと。いずれも素晴らしい実績であり、国内事業もDANとともにビジネスを拡げていく可能性を改めて感じています。

アンドレー:確かにDANはこの6年間で大きく成長しました。電通グループ全体の収益の60%を占め、150件以上のM&Aを実施し、社員数も44,000名強まで増えました。しかし、DANはまだ多くの点で進化できると考えています。クリエーティブのケイパビリティ強化、収益源の多様化、またスポーツビジネス、コンテンツビジネスの確立などで、これらの領域について日本の電通の事業ノウハウを学ぶことは私たちにとって大きなチャンスと言えるでしょう。さらに、クライアントとの長期的で深い関係構築や統合されたホリスティックなアプローチなど、DANも多くのことを日本の電通から学び、ともにビジネスを成長させていくことができると感じています。

五十嵐:さらなる進化が求められているのは国内事業も同じです。今、私たちの事業環境は大きく変化しており、これにどう対応するか、対応するだけでなく、その変化を機会に変えていけるかが電通グループの今後を決めるという非常に重要な時期が到来していると思います。

アンドレー:私たちのクライアントは、市場への新たな参入、ディスラプター(創造的破壊者)やテクノロジーの進化、消費者の求めるものの変化に晒されています。クライアント側に変化が求められるにつれ、私たち広告会社も、マーケティングの役割をビジネス・トランスフォーメーションと捉え、長期的な持続可能性に、これまで以上に着目することが求められます。こうした状況は私たちにマーケティングアプローチの再考を迫るものですが、一方で、私たちが十分に備え、迅速に進化して対応できるならばこの変化を機会とすることができると確信しています。

五十嵐:私たちがビジネス・トランスフォーメーションを進めている理由もまさにそこにあります。日本国内で培ってきたユニークネスや強み、DNAを大事にしつつも、そこに固執するが故に変革のスピードを停滞させることがあってはならない。電通が十分な競争力をもっていない、あるいは、まだ克服していかなければならないと考える部分は、最大限にスピードをあげて対応していく。すべての与件なく、大胆かつ迅速にあらゆる面で変革を進めるとの決意で私たちは今、ビジネス・トランスフォーメーションに取り組んでいます。

電通グループの進化は第2フェーズへ

アンドレー:クライアントは、自社にイノベーションをもたらしてくれる新たなケイパビリティを求めています。しかもそれらが統合され、全体最適となるソリューションであることを重視しています。
DANは主に買収によって高度なデジタルのケイパビリティを獲得してきました。しかし、クライアントが、その顧客を獲得、維持し、その基盤を成長させることをサポートし、クライアントの最も信頼されるパートナーとなるためには、アイデアを起点にし、データとテクノロジーを活用できる強力な事業基盤を築き上げる必要があります。また、私たちは世界中どのマーケットでも一貫して最高水準のサービスを提供していくために、オペレーションの効率化に向けた投資も必要です。
これまでお話したようにDANでは、いくつかのプロジェクトに取り組んでいますが、国内ではクライアントに提供するソリューションに関して最近新たなコンセプトを掲げましたね。

五十嵐:「Advertising Agency」から「Business ProducingCompany」になるという目標を掲げています。顧客の全てのマーケティング活動に我々がコミットできるよう事業領域を拡張し、多様なイノベーションや価値を生み出す組織を目指すとの方針を掲げ、さまざまな取り組みを開始しています。

アンドレー:継続的なイノベーションを試みることにより、私たちの専門性が高まり、クライアントへの価値を提供し続けることのできるハイ・パフォーマンスの組織となることができると、DANの幹部も考えています。

五十嵐:私たちのビジネスは、他社と違うクオリティのサービスを提供していくことが肝要です。ですから、一つひとつの専門性をあげていくだけでなく、それらを統合して一つのソリューションとしてサービスできる、そういった企業になることを目指しています。

アンドレー:私もまったく同意見です。これまでは十分なレベルのコラボレーションを行っていればクライアントのニーズを満たすことができましたが、今後はより組織化、統合化されるようにデザインされたサービスこそが、複雑化したビジネス環境の中でクライアントが成功を収めていくことに対する提案の基盤となります。
私たち電通グループは、アジア発で唯一のグローバル規模のマーケティング・コミュニケーション企業であり、長期的なクランアント・セントリックなアプローチを継続していきます。過去6年の間、電通グループは、グローバルな市場でクライアントに高レベルのサービスを提供するために、日本及び海外で強固な事業基盤を整備することに注力してきました。この過程において、国内事業と海外事業の間で、協働作業やシナジーの創出が行われてきました。今こそお互いのさらなる統合をどのように進めていくことが最良であるか決めるべき段階に来ているのではないでしょうか。さらなる統合の結果、海外で買収した会社のベストプラクティスを日本のクライアント作業に展開したり、日本で生まれた素晴らしいイノベーションやノウハウを海外で活用したりといった可能性がさらに広がり、クライアントにも世界中でよりシームレスに質の高いサービスを提供できるようになっていく―それが私たちの目の前にある大きな機会だと思います。

「One Dentsu」への期待

アンドレー:2020年1月に予定されている持株会社体制への移行によってもたらされる変化には大いに期待しています。「One Dentsu」となるということは、国内事業とDANがクライアントやイノベーション、クリエーティビティに対する情熱を共有したうえで統合とシナジー創出を進めるということです。その結果、組織はよりアジャイル(迅速)に、効率的になるでしょう。そして、持株会社はグループ全体の将来を見据えてその進むべき方向性を示すようになり、国内の電通とDANが同じ方向性に一層向かっていくことができる―私はここも大変重要なポイントと考えています。

五十嵐:私も大きな期待感を抱いています。一つ強調しておきたいのは、私たちは「普通の」持株会社体制にしたい訳ではないということです。電通グループの持株会社体制は、通常のトップダウンのヒエラルキーではなく、持株会社は各事業会社が活動しやすくなるような基盤をつくり、下支えをしていく役割を担います。「One Dentsu」を構成するすべての事業会社はフラットに配置され、有機的につながります。6万人強のグループ社員のどこからでもコラボレーションとイノベーションが起きる環境、すなわち「TeamingPlatform」を作るのです。

アンドレー:チームの体制でフレキシビリティが大きな組織ということですね。おそらく他にはあまりない形だと思いますが、これこそが今後私たちが直面する不確実性と複雑さの中でデジタルエコノミーを推進することができる組織の形だと思います。

五十嵐:それを「一人の人が何かを決定して何かを変えていく」といったやり方だけで達成することはできないことはすでに明白になっています。だからこそ、それぞれ専門性をもった人たちがTeaming Platformに集まり、外部の方々との協業にも躊躇せず、新しい価値を生み出すとの強い思いを持って事業を拡張していく―今回の持株会社体制への移行はそうした意味を持つものであり、「新しいグループ」を創っていくのだという私たちの決意表明として皆さんに理解していただけるように努めていきたいと思います。

「One Dentsu」の先にあるもの

五十嵐:今、社会はその全体が、一種のカオスと呼べるほどの複雑さを示しています。こうした中で、社会的な課題を解決していくため、さまざまな領域の企業が、そのリソースを活用してそれぞれの貢献をしていくのは当然のことだと思います。

アンドレー:その通りです。DANでは、全ての人にとって良きデジタル社会が今後築かれなければならないという考えから、社会全体を長期的視点でのステークホルダーと見ております。私たちは世界に対して責任を負っていますし、持続可能な社会のために貢献していかなければなりません。ビジネスに求められることと社会のために求められることが合致しつつある、それは取りも直さず、優れた企業の目指すものは、国連のSDGsに沿っていかねばならないということを示しているのでしょう。

五十嵐:そうですね。ただ、私たちが単純にそういった社会課題を解決するだけの存在でいいのかと言われれば、電通のユニークネスはそこではないと私は考えます。マイナスのものをゼロにすることが私たちのゴールではなく、マイナスのものをプラスにしていく―世の中を面白くする、世の中を変革することこそが電通という企業の存在意義であり、電通人が活躍できるポジションだと考えます。

アンドレー:私たちの目指しているものは、組織としての行動に裏打ちされていなければなりません。電通グループが社会の中で、そのような存在であれば、従業員も毎日わくわくした気持ちで仕事をし、自分たちに誇りを持つことができる。さらにそうした活動の中から株主の皆様にも価値を提供できると思います。

五十嵐:私たちが有するユニークな解決策で社会が良くなることはもちろん、社会を構成する企業市民そして生活者すべてが面白い、楽しいと思えることの実現に私たちの企業活動が貢献していく。そうでなければ電通グループが存在している意味はないと思いますし、そういったことを目指していきたいと思います。

アンドレー:すべての人にとって良い社会にしていく、その想いは私も同じです。特にデジタル社会については変化が激しく、格差も拡大しつつあります。テクノロジーへのアクセスがある人もいればそうでない人もいますし、貧富の差もますます大きくなっています。そうした格差を小さくしていくこと、持続可能な成長とパフォーマンスの両者について短期的にも長期的にも適切なバランスをとっていくことには難しい決断も伴いますが、DANは、デジタル革命のパイオニアとしてすべての人のためのデジタルソサエティ(社会)が構築できることを信じています。

五十嵐:デジタル化の進展はすべての顧客に影響します。電通はそのビジネスを通じて社会の変革に携わる機会があり、持続可能な社会の実現に貢献できると確信しています。

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